小泉進次郎衆議院議員(41)と広島秋山翔吾外野手(34)による3年連続3度目の“横須賀会談”が実現した。今季途中3年ぶりに日本球界に電撃復帰した秋山に、進次郎氏がインタビュアーとなり質問攻めにした。日米、セパの違いなど、環境の変化への備えや対応に必要なものとは。両氏が見つめる23年への思いに共通点も。今年も存分に、熱く語り合った。【取材・構成=前原淳、栗田成芳】

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米国から日本に復帰した秋山との再会に、進次郎氏は政治家からインタビュアーと化した。

進次郎(以下、進) 世界最高峰のメジャーリーグを経験して、今広島で何を感じているのか気になって仕方がない。今回、僕はインタビュアーの気持ちでいます。僕は大学を卒業して、人生で初めての1人暮らしがアメリカでした。当時、家賃の支払いは小切手だったんです。でも小切手なんて使ったこともないじゃないですか。書き方から分からない。それに言葉も自由に話せないので肩身が狭く、家族も友人もいないので心細い。自分が外国人になるということは、こういうことかという経験をしました。秋山君は日本から米国、そして今度は米国から日本の中でも住んだことのない広島へ。この環境の変化は多分、誰も経験したことがない。そこには秋山君にしか分からない苦労、そして学びがあったと思う。

秋山(以下、秋) 進次郎さんの海外経験の話はこれまであまり聞く機会がなかったので、新鮮です。僕の場合は日本人メジャーリーガーたちの情報がありましたし、家族もいてくれたので。シンシナティは日本人選手が誰も行ったことのない町でしたが、すぐに気に入ったので苦労はそんなになかったんです。ただ、コロナが重なったことで何が大変か分からなくなっているところはあります。メジャーリーグというものを感じきる前に終わってしまったところはあります。

進 メジャーで苦労する日本人選手がいっぱいいるけど、秋山君にとって苦労したところは?

秋 こんなにも自分が思ったプレーができないのかと思いました。

進 それはパワー? それともスピード?

秋 スピードというものが前提にある中で、パワーですね。投手の球の力を100としたら、同じ100の力で受け止められてからが勝負だと思っていたら、終わりました。

進 そういった経験を経て、今度は日本に戻り、経験のないセ・リーグへ。反対に「遅い」や「飛ぶ」と感じることはあるの?

秋 「遅い」とか「飛ぶ」というのはなかったですね。パ・リーグとセ・リーグとの違いもあまり感じなかったのは、アメリカに行った時の衝撃度が上回って鈍感になっているのかもしれません。ただ、パ・リーグの1番打者と、9番に投手が入るセ・リーグの1番打者は職業が違うくらい、違いますね。今年は3番に入ることが多かったですが、1番に入っていたら違いを語れることが多かったかもしれません。

進 来年は日本復帰後、初のシーズン開幕だね。

秋 今年はシーズン途中(の加入)だったので、とにかく最後まで試合に出られる状態をつくればいいと思ってやっていました。ただ、そこにプラスアルファの練習や時間の使い方はできなかったです。来年はそこまで自分に課して、その上で結果も残したい。“欲張りコース”で行こうと思います。ブレーキをかけるのではなく、アクセルを踏めるか。35歳を区切りの年齢と考えれば、来年がその年になる。答え合わせはシーズンが終わった時にやればいいと思うので、アクセルを踏める1年にしたいです。

進 僕は国対副委員長という立場に加え、4月から自民党の神奈川県連の会長という立場にもなった。いかにやらない仕事を決めるかということを、より意識するようになりましたね。政治ではどうしても単発の仕事をパッと入れると、気付けば丸1日休みという日がなくなってしまう。目の前の仕事や努力が、ある意味で使い捨て消費のようになってしまう。将来につながらない忙しさにならずに、持続可能になるような仕事選びをしないといけない。野球で言えば、手を出さない球を見極める“選球眼”かな。そこをより厳しく意識付けることがとても大事だなと感じます。

-来年はともに1年というスパンで見るのではなく、その先の未来も見据えている。政界、プロ野球界というそれぞれの世界でキャリアを積んできたからこそでは

進 やっぱり、うまくいかないことをたくさん経験したからじゃないですかね。経験というのは、大きい気がします。

秋 大きいですね。成功を続けたい、というよりも、同じ失敗をしたくない。野球も、打撃で言えば3割しか打てない中で、(打てなかった)7割をどう生かすかが大事だと思います。それに僕はアメリカに行く前から、とにかくどんなことにもびっくりしない準備をしていました。来年は新井監督となりますが、監督が代わるタイミングはチームが変わるタイミングでもある。長く続ける上でも、こういう切り替えの年は入りが大事だと思うので、しっかり準備します。(つづく)