アマゾンのPrime Videoが25日、3月のWBCで侍ジャパンの全試合、さらに準々決勝、準決勝、決勝をライブ配信することを発表した。

ネットを使った動画配信サービスが、スポーツの大きな大会を配信する。記憶に新しいのは、昨秋のサッカーW杯で全試合を無料配信したABEMAだ。本田圭佑の自由奔放な解説でも話題を集めた。テレビの地上波で中継される試合であっても、あえてABEMAで見るというファンは少なくなかったと思われる。

放映権料の高騰やテレビ離れが言われる。このまま、スポーツはネットで見る時代になるのか。そもそも、なぜアマゾンやABEMAがスポーツ配信に乗り出すのか。プライム・ビデオ ジャパンカントリーマネージャーの児玉隆志氏は「まず配信で流す意義は、コンテンツの差別化ができるであろうということです。いろんな意味でテクノロジーも進化している。どんどん、押していくことができる。時差があるような試合は、なかなか自宅で、大きな画面では見られないケースも多いと思います。そういった場合、前回のサッカーW杯もそうだったと思いますが、携帯、スマホ、タブレットで、いつでもどこでも見られるというのも、お客さまにとっての付加価値になると思います」と強調した。同社の成長戦略において、スポーツのライブ配信は「大きな柱」になっているという。

Prime Videoはボクシングの世界戦をライブ配信した実績がある。次の競技にWBCを選んだ理由を問われ「大きな投資をする際は、どれだけ多くのお客さまにご満足いただけるかが大事。野球はもともとファン層が広い、大人気のスポーツですが、WBCは野球ファンでなくても見逃せない。そんな大会と考えて、ライブ配信することにしました」と説明した。取材をしていても、昨年11月以降、大谷、ダルビッシュらが参加を表明したことで、読者のWBCへの関心は一気に高まったと感じる。この流れに、Prime Videoも乗ったと言えそうだ。

では、もう1つの疑問。このまま、スポーツ大会はネット視聴の時代になるのか。児玉氏は「必ずしも、(テレビとネットの)どちらかでなければいけない、ではないなと。サッカーのケースもそうでしょうし、私どものWBCの配信への挑戦もそうだと思います。いい補完関係が築けると思います。テレビの方がどんどん減っていっていいとは思いません。国民的行事というか、オリンピックもそうでしょうけども、スポーツは裾野が広いファン層を常に育てるのが大事ですから。もちろん、配信で我々が囲い込みたいとかはなくて、やはり地上波で広く、あまねく放送するというところがあれば、ご一緒にやらせていただくのが一番いいと思っています」と話した。今回、地上波はテレビ朝日系列とTBS系列が放送する。

インターネットが普及していく過程で、新聞業界でも、紙か、ネットか、という議論が起きた。健全であるための大前提として、各社の競争は欠かせない。その上で「いい補完関係」はカギになる言葉だと感じた。【侍ジャパン担当 古川真弥】

【関連記事】「WBC2023」特集ページ