阪神大山悠輔内野手(28)が3日後に控えたシーズン開幕に向け、日刊スポーツ独自企画「比べるのは昨日の自分」で今季に懸ける思いを激白した。

オープン戦では一時は打率0割台にも陥ったが、不調脱出の引き出しを懸命に模索。24日からのオリックス3連戦で2本塁打を放ち、一気に状態を上げた。絶不調時の本音は? 新打法の現状は? 今季の大目標は? 4番は「去年以上の緊張感をプラスに」と燃えている。【取材・構成=佐井陽介】

    ◇    ◇    ◇

プロ7年目でもっとも苦しんだ早春、と表現しても過言ではなかった。オープン戦打率は一時0割台に突入し、上昇しても1割台。焦りはなかったのか? 大山は「う~ん…どちらもですね」と苦笑いした。

「まだオープン戦だからという割り切りも分かるけど、出ている以上はいい内容の打席も増やしたい。オープン戦だからと軽い気持ちでやってはいけない。でもシーズンで打たないと意味がない。まだ大丈夫と思いすぎると良くないし、ある程度の焦りは持ちつつ…。半々、でしたね」

日本中が侍ジャパンフィーバーに沸いていた3月の絶不調。とはいえ、ただでは転ばなかった。「結果が出ないからといって、自分からマイナスな方向に持っていくのは良くない。打てない時、悪い時に姿勢が出る」。黙々と「不調時にしかできないこと」に尽力し続けたのだという。

「シーズンでも必ず波は来る。もしかしたら悪い時期の方が多いかもしれない。落ちている期間をいかに早く止められるかも重要。不調時はすぐに調子を戻すための引き出しを増やせるチャンスでもある。そのチャンスが今だと思って練習していました。どう練習すればいい方向に少しずつ戻れるのか。私生活では食事や睡眠だったり…。何かのきっかけを見つけることが大事だと考えて日々過ごしていました。引き出しは多ければ多いほどいいので」

岡田監督が就任した昨秋以降、指揮官の助言を受け、打つポイントを前にした新打法を全身に染みこませている。ただ、完全習得に至るまでの過程では、時に新たな悩みも出現する。そんな日は試合後の自主練習をきっかけの場にした。

「『ポイントを前に』という意識を軸にするのは間違いない。ただ、ポイントを前にする意識を持つことで、スイングが遠回りしてしまっている時もある。そういう時は試合後にあえて窮屈に打ってみたり、ポイントを近めに設定してスイングの軌道を修正したりしています。試合中でもフルカウントでは窮屈に打たないといけない場面もある。全打席全球ポイントを前にするのは難しいですから」

三塁、一塁、左翼、右翼と4ポジションを守った昨季から一転、23年は例年以上に不動の立場で開幕を迎える。岡田監督は1月下旬に早くも「4番一塁大山」を明言。指揮官の思いを「うれしく思わないと」と受け止めた上で、心地よい武者震いに燃えている。

「もちろん準備はしやすくなる。明日はどこを守るのかなと心配しなくてもいいし、試合前もファーストのみをみっちり練習できる。ただその分、しっかりやらないといけないという、いい意味でのプレッシャーはあります。あとは自分がやるだけなので、覚悟ができるというか。そういう緊張感は去年以上かなと思います。やっぱり打たないといけない。そういうプレッシャーもプラスにとらえてやっていきたい。プレッシャーを楽しむというよりは、油断やスキが出てこないようにプラスに使っていきたい、という感じですね」

21年は5月に背中の張りで離脱し、129試合出場。22年も4月下旬の左膝負傷、夏の新型コロナ感染が影響して124試合出場にとどまった。大目標はフル稼働。オフからは新たにピラティスでも体を鍛える。

「やるとやらないとでは全然違う。シーズン中もナイターの練習前に時間をつくってできればと思っています。プレー中のケガも、普段の生活から少しずつ意識していれば防げた可能性もある。トレーニング、食事、睡眠…。細かいところをもっと詰めて、今年は1年間しっかり出続けたい」

◆大山のここまで 岡田監督から4番一塁の固定を明言されて2月の沖縄・宜野座キャンプに臨んだが、対外試合は5試合23打席、19打数無安打。3月4日のオリックス戦で23年初安打を放ったが、その後も状態は上がらず。開幕まで10日を切った22日巨人戦で打率が1割4分9厘となり、岡田監督から不振の5番佐藤輝も含めて「それ(打順固定)が理想やけどさ。打てんかったら、それはあかんわな」と再考もほのめかされた。だが、24日のオリックス戦でオープン戦15試合、60打席目に、プロ7年目で最遅の1号。翌25日も2試合連続弾を放つなど、最後の最後で状態を上げてシーズンに臨む。

【関連記事】阪神ニュース一覧