虎の勢いが止まらない。阪神が15年ぶりの開幕4連勝を決めた。

同点に追いつかれて迎えた直後の9回、4番大山悠輔内野手(28)が広島守護神の栗林から中越えの勝ち越し二塁打。オープン戦は大不振だった主砲が、開幕4戦連続打点&2戦連続V打で完全に目覚めた。昨季借金7を背負ったDeNA戦に続き、開幕から9連敗を喫した広島にも初戦快勝。苦手をカモに岡田阪神が進撃の勢いだ。

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マツダスタジアムに阪神ファンの歓声と広島ファンの悲鳴が交錯した。二塁ベースに到達した大山悠輔内野手は、真剣なまなざしを崩さない。9回2死二塁の決勝打。沸き立つ三塁ベンチをちらっと見て、また戦闘モードに戻った。

「まだ1点で試合が終わっていなかったので、次の1点、というところを考えていました」

4番の集中力はマックスだった。8回裏に同点に追いつかれ、マウンドには広島の守護神栗林。心の中で「もう、かえすだけ」と覚悟を決めた。カウント1-1から内角の速球を強打。打球は左中間真っ二つだ。「抜けるとは思った」と確信する勝ち越し適時二塁打。ベンチで「ナイスバッティング」と声をかけられても「もう次の守備に気持ちは向かっていました」と、気持ちを切らさなかった。 秋、春のキャンプではフリー打撃で誰よりも打球を飛ばした。「今年はキャリアハイを」と高みを目指す中、「10球やったら、10球、100球やったら100球を目指していかない」と完璧を求め続けてきた。

そんな男が、開幕を迎え、スイッチを切り替えた。「どんな当たりであっても、もうオープン戦じゃない。シーズンは結果」。泥くさく目の前の1点を取りにいく。5回には犠飛で4試合連続打点を決め「最低限の仕事ができた」。どんな形でも、チームのためになればそれでいい。

岡田監督からも「4番に置いとるわけやからな、一番ええとこで打ってくれたよな」と称賛された。指揮官が「うっしゃ、ういういういういうい」と独特の“岡田節”を発し、上機嫌に会見を締める喜びようだった。指揮官の気分も高揚させるほどの打棒は、4試合で打率4割1分2厘、チームトップタイ5打点。安打数7はノイジーと並びリーグ1位だ。オープン戦で打率1割台と苦しんだ姿は、もうない。

「まだ4試合。油断であったり、隙を見せてしまったら、崩れるのは一瞬だと思う。もう1度引き締めてやりたいと思います」

昨季7つ負け越した開幕DeNA戦に続き、昨季開幕9連敗の広島戦も初戦に勝利した。15年ぶりの開幕4連勝。隙のない4番が、猛虎の中心にどっしり座る。【中野椋】