「サヨナラ男」が窮地で奮い立った。ソフトバンク栗原陵矢外野手(26)が、今季2度目のサヨナラ打で連敗を4で止めた。延長11回無死一、二塁。オリックス平野佳の直球を仕留めた。藤本体制2年目で初の借金生活の危機だった一戦で3安打3打点と活躍し、3位浮上に貢献した。劇勝の勢いそのまま、5日からは前回3タテを食らわされた敵地・千葉でロッテ3連戦に臨む。

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連敗脱出の立役者となった栗原は、歓喜の渦に吸い込まれていった。仲間から手荒い祝福を受け、笑みがはじけた。4時間14分に及んだシーソーゲーム。劇的すぎる幕切れに連日4万人を超えた観客の興奮も収まらない。ヒーローは、お立ち台で「たくさんのお客さんが来ていただいたのに昨日、今日と本当にふがいない試合してしまった。何とか、勝てて良かった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

腹をくくった男に迷いはなかった。7-7の11回。先頭近藤が四球、続く柳田の安打で無死一、二塁とチャンスが来た。「もう、打つしかない」。カウント2-1。守護神・平野佳の外角高め147キロ直球を振り抜くと、打球はライナーで前進守備の中堅の頭上を越えて行った。「あ~疲れた」と充実の汗をぬぐい、「(藤本)監督が打てのサインを出してくれた。打てる球をしっかり振るだけでした」。これ以上ない一打で指揮官の信頼に応えた。

前日3日には計5投手が22安打を浴びて、9失点。被安打22本以上は、球団22年ぶりという歴史的大敗だった。一夜明けた一戦も初回に2失点。嫌な雰囲気を引きずった。「負けている状態で、勢いに乗れない雰囲気だった」。栗原はそう感じ、初回は一時同点の2点適時打、4回は2死から遊撃への内野安打で出塁と懸命に食らいつき、終わってみれば今季2度目の猛打賞、3打点の活躍だった。

副キャプテンの一振りで、同一カード3連敗、今季2度目の5連敗、さらには藤本体制2年目で初の借金生活を回避。3位に浮上し、藤本監督も「今日の勝ちは本当に大きいと思いますよ」とかみしめた。5日からは敵地で2位ロッテ3連戦。前回4月には千葉で3連敗している。かつ、相手先発は難攻不落の佐々木朗だ。劇勝の勢いそのまま「令和の怪物」撃ちで、反攻へ弾みをつける。【佐藤究】