夏が来た。ベルーナドームも蒸す。5月から6月にかけての虫の到来を「日常茶飯事です」と言う西武中村剛也内野手(39)は、暑さ対策も「我慢です」と実に王道、すがすがしい。

我慢、我慢の試合の、最後を決めた。9回1死二塁。日本ハム池田に初球、空振り。「初球を空振りした時はやばいなと。投げっぷりもよくて、いい感じ」。その後カウント1-2になっても、焦らない。ここでも我慢。

外野がやや前進守備だった。「決めるなら、ちょっと角度をつけてみるとか、そういう感じで」とイメージし、追い込まれ「届く球をエンドランくらいの気持ちで」と切り替え、カットボールを捉えた。中堅手の頭を抜けていった。

もちろん緩めない。二塁走者のホームインを確認するまで、しっかり走った。二塁を過ぎ、勝利を知ると、テンションを上げた増田が寄ってきて水を掛けられた。「あんまり受けたくないですけど。ぬれるから」と言いつつ、顔はやっぱりうれしそうだ。

ボールを飛ばす、高く上げる、生粋のスラッガー。球宴ではホームランダービーへの出場も決まった。

「何分かも打ちっぱなしっぽいですよね。ちょっと多分体力的に厳しい。何とかうまいことやりたいなと思います」

きっと、本当にうまいことやる。仲良しの源田壮亮内野手(30)は「すごく打ちそうだな~と思って見てました。さすがです。めちゃくちゃ頼りになります。自分の間合いでずっと打席に立っているので」。泰然自若、行雲流水。通算2005試合に出場したベテランの落ち着きは、昨日今日のものではない。

「ちょっとまだ、借金いっぱいあるし」

そう苦笑いしながらも、この4連勝の意味が大きいことは誰よりも知る。

暑い夜を熱い夜にし、額や腕には玉のような滴だらけ。増田らに掛けられた水じゃなくて「これ、汗ですよ。急いで帰ってきたので」と我慢しながら、報道陣にも対応した。いま一番したいことは「シャワー。浴びたいです」と即答するのも至極当然のこと。

暑い夜は続く。16日、17日は所沢市が最高気温36度の予想。グラウンドはもっと暑くなる。

「試合に出たらけっこうDHが多いんで…大丈夫です」

うんとうなずきながら、決め顔を見せた。シャワーを浴びて、寝て、また熱くする。【金子真仁】

▼39歳11カ月の中村が22年8月4日オリックス戦以来、自身8本目のサヨナラ安打。サヨナラ安打の年長記録には56年岩本(東映)と13年山崎(中日)の44歳6カ月があるが、西武では67年5月25日近鉄戦で記録したロイの39歳5カ月を抜いて球団最年長となった。

【動画】西武中村剛也センター越えるサヨナラ打!チームメイト水かけようと追いかけるも、逃げる

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