岡田阪神がからくも逃げ切り、5連勝で首位を守った。敵地での伝統の一戦は5-0の楽勝ペースから暗転し、8回には岡本和の適時打で7-7に追いつかれたかに思われた。だが、秋広の本塁生還を巡る岡田彰布監督(65)のリクエストが成功して1点リードを保持。9回にも岩崎が一打サヨナラのピンチを招いたが踏ん張り、貯金を今季最多の貯金19に増やした。敗れた2位広島とのゲーム差を3・5に拡大。粘り腰発揮で大きな1勝をつかんだ。

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球審の両手が真横に広がり、ついに7-7に追いつかれたかと思われた。だが“同点”にG党が沸き返る中、岡田監督は自信を持って審判団にリクエストした。「こっちから見てもアウトと思ったけどな。前でタッチしとったからな」。2点リードの無死一、二塁。4番手馬場が岡本和に左中間を破られた。同点の一塁走者、秋広が一気に本塁突入。阪神は中堅近本-遊撃木浪-捕手梅野と懸命につないだ。そしてリプレー検証の結果、判定が「アウト」に覆って1点リードが確定すると、左翼、三塁側の虎党から大歓声が起きた。

紙一重のプレーは練習のたまものだった。「ずっとシートノックというか、連係とか、ずっと言っていたことが一番いい時に生きた」。就任直後の秋季安芸キャンプから必ずカットマンを通し、素早く、低めにと徹底的に鍛えてきた中継プレー。ここ一番で結実のビッグプレーが飛び出した。

それでも、流れはまだ巨人だった。馬場が岸田に左前打を許し、なお1死一、三塁の大ピンチ。たまらず指揮官はケラーを投入した。それでも同点はやむなしか…。だが、助っ人右腕は渾身(こんしん)の投球で長野を三直に仕留め、ブリンソンは高めの150キロで空振り三振に斬った。「やっぱり三振取れるのはケラーやな。(相手が)小さいことやらんバッターになってたからな、(馬場より)ケラーの方がいいと思った」。何とかリードを保って9回の岩崎につないだ。

「本当やったら石井いっとったよ。だから馬場に懸けたけどなあ」。この日再昇格させるはずだった石井が発熱で緊急帰阪。そんな状況の中で懸命にやりくりし7-6で逃げ切った。3回までに5-0とした試合で負けるわけにはいかなかった。「1回も追い越されんかったからな。絶対に勝たなあかんゲームになってしもうた」とナインの粘りをほめた。

今日も勝てば、宿敵巨人は自力優勝が消滅する。貯金は今季最多の19。2位広島も敗れ3・5ゲーム差に広がった。チームは5連勝。「強なってるんちゃう。こういう風に負けないことが大きいわな。やっぱりな。1点差やけどな」と成長を感じている。大きな1勝を手に18年ぶりの「アレ」に突き進む。【石橋隆雄】

▼阪神は最短で15日に優勝マジックが点灯する。9日から阪神が5連勝で広島が5連敗と仮定。15日の直接対決で阪神が広島に○ならM28、△でもM29がともる。なお球団最速は03年の76試合目で、7月8日にM49がついた。