<東都大学野球:中大7-1青学大>◇第1週第2日◇3日◇坊っちゃんスタジアム

東都1部の“ドラフト候補6人衆”の1人、中大の西舘勇陽投手(4年=花巻東)が、大学通算10勝目を挙げた。

7球団のスカウトの前で、自己最速にあと1キロと迫る154キロの力強い真っすぐを披露。キレのある変化球を織り交ぜ7回を2安打10奪三振で1失点の好投。最速155キロ右腕・青学大の常広羽也斗投手(4年=大分舞鶴)との投手戦を制し、1勝1敗とした。

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ラストシーズンにかける思いが、西舘の1球1球に込められた。「左打者には外の低めにカットボールがとれたり、コースに投げられた。2ストライクからのフォークも生きました」。7月中旬、右太もも肉離れを発症した調整遅れをものともせず、王者青学大の好打者を封じ込んだ。

最速155キロ右腕同士の投げ合いを見つめる巨人水野スカウト部長がつぶやいた。「西舘君、常広君、下村君、草加君、武内君、細野君。レベルが高い。上位で消えるでしょう」。他の5投手は今夏、日米大学野球選手権で活躍。フォームを見直し臨んだ秋で、再びその名前をとどろかせた。

転機はクイック投法転向の2年冬。「足を上げると体重移動に入る時の股関節の使い方が下手で…。それならクイックでシンプルに前に押すだけのフォームの方がいいと思ったんです」。スクワットや20キロのシャフトを使い、体重移動の足の使い方を反復練習。「リリースの感覚はクイックの方がいい」と球速アップにもつなげた。この日はクイックに加え「投げながら変えて。ほんの少しの差で打者に嫌な間になると思った」と足をゆっくり上げる動作も。打者のタイミングを外し空振りを奪った。

昨春、順位決定戦プレーオフの青学大戦に2番手で登板。9回に勝ち越しを許して最下位に沈み、チームメートの前で「僕のせいで負けた。すいません」と泣き崩れた。「勝てる投手になるために」走り続けた1年半。西舘はチームを優勝に導くために腕を振る。【保坂淑子】

◆東都1部のドラフト候補6人衆 東洋大・細野晴希投手(4年=東亜学園)青学大・下村海翔投手(4年=九州国際大付)常広羽也斗投手(4年=大分舞鶴)中大・西舘勇陽投手(4年=花巻東)亜大・草加勝投手(4年=創志学園)国学院大・武内夏暉投手(4年=八幡南)の6人は、いずれもドラフト上位候補と注目される逸材。東都1部5チームに好投手がそろい、しのぎを削っている。

◆東都大学1部のドラフト候補6人衆

東洋大・細野晴希投手(4年=東亜学園) 180センチ・86キロ 左左 最速158キロ

青学大・下村海翔投手(4年=九州国際大付) 174センチ・73キロ 右右 最速155キロ

青学大・常広羽也斗投手(4年=大分舞鶴) 180センチ・73キロ 右右 最速155キロ

中大・西舘勇陽投手(4年=花巻東) 185センチ・79キロ 右右 最速155キロ

亜大・草加勝投手(4年=創志学園) 182センチ・76キロ 右右 最速153キロ

国学院大・武内夏暉投手(4年=八幡南) 185センチ・90キロ 左左 最速153キロ

 

▽ソフトバンク永井スカウト部長 彼の一番の持ち味は変化球のキレ。プロでも通用する。結果でみると春は打たれたけど、十分高い評価ができる選手だと思います。

▽ロッテ榎アマスカウトグループディレクター 変化球にタイミングが合わないということは曲がりもいいということで、一級品。ストライクがとれて勝負できるのが強みですね。

▽青学大・安藤寧則監督(春からの11連勝がストップ)「ちょっとボタンの掛け違いで、これだけの失点につながる。選手は1人1人力を出してくれた。これが東都。あらためて厳しさを感じたゲームでした」