“優勝決定戦”となった早慶戦で、慶大が勝利し頂点に立った。

21年秋以来4季ぶり40度目の優勝。全5校から勝ち点を挙げる完全優勝は、21年春以来。ソフトバンク3位指名の広瀬隆太内野手(4年=慶応)が通算20号となる先制2ランを放ち、大舞台での強さを発揮した。早大は終盤に追い上げたものの及ばず、20年秋以来の優勝には届かなかった。慶大は明治神宮大会(11月15日開幕)に出場する。

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神宮球場のオレンジ色の空に、広瀬が3回舞った。“持っている男”だ。0-0で迎えた3回無死一塁、初球の131キロ直球を豪快に捉えた。「1試合に1球来るか来ないかの甘い球だった」とボールは慶大応援団が待つレフトポール際へ。打った瞬間に右手をグッと握りしめ、ガッツポーズをして走り出した。

映画やドラマを見ても、泣かないタイプ。普段はなかなか表情を崩さないが、この日は違う。笑顔でベンチへ。「一番記憶に残るホームランになりました」。早慶戦を3戦連続で視察した担当のソフトバンク松本スカウトは「完璧な当たり。いいものを見させてもらった。(試合前の)フリー打撃から調子がいいと思って見ていた」と話した。

主将として主軸として、重圧のかかる最終年。秋季リーグ開幕の2週間前に右手首を負傷した。痛みを押して試合に出ていたが、途中で練習を1週間休むほどの重傷。悪化させないため、走塁の際には「走塁ガード手袋」を使用するようになった。29日は午後9時までバットを振るなど、コンディションを調整して最終戦に臨んでいた。

通算20号は、阪神岡田監督に並ぶ歴代4位タイ。これから入るプロの世界へ「偉大な方と肩を並べられて光栄です。岡田監督くらいの活躍を目指して頑張りたい」。幼稚舎から着ている慶応のユニホームを着られるのも、あと少し。「このユニホームには思い入れがある。かみしめながら(明治神宮大会決勝まで)3試合頑張りたいです」。慶大の広瀬として、最後まで打ち続けるつもりだ。【保坂恭子】

▽慶大・堀井哲也監督(4季ぶりの優勝に)「正直ホッとしている。今年のチームは団結力があり、精神面も強い。大学代表でも活躍した広瀬の存在は大きかった」

▽慶大・外丸東真投手(今秋6勝で優勝に貢献)「第1戦よりも調子はよかった。優勝できてベストナインにも選ばれて、うれしいです」