岡田阪神は果たして球団史上初のセ・リーグ2連覇、2年連続日本一を達成できるのか-。

日刊スポーツが誇る名物ライター3人がシーズン開幕を直前に控え、24年猛虎への思いを書き込んだ。オープン戦は球団ワーストの開幕9連敗から苦しんだチームだが、もちろん本番はこれからや!

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東京ドームに入る前には、いつも上野にあるトンカツの名店「井泉」で腹ごしらえをする。知る人ぞ知るカツサンド発祥の店。新橋、柳橋に次ぐ格式の花柳界で、芸者衆の口元を汚さない心遣いから考案された。

巨人と阪神が築いてきた「伝統の一戦」の取材となると、なぜか“カツ”で縁起をかつぐ習性が染みついているようだ。ひれかつ定食を平らげた後、親戚で着物姿の女将(おかみ)に見送られて店を後にする。

両軍の戦いは常に独特な雰囲気に包まれ、スペシャル感が漂うから不思議だ。阪神監督の岡田彰布が「今年の巨人は相当やってくるやろな」と真顔で言うほどだから、また違ったムードが流れるだろう。

そこで岡田が現役時代にもっとも心に残っているTG戦を聞いてみた。1985年4月17日の甲子園、ランディ・バース、掛布雅之、岡田の「バックスクリーン3連発」を予想していたら間違いだった。

岡田は間を置くことなく、「ガリクソンから逆転満塁のホームランを打った試合よ」と教えてくれた。奇跡の3連発以上の衝撃を受けたのは1989年6月25日の甲子園。劇的アーチで大逆転勝ちをもたらした。

1-4で迎えた8回裏、無死から八木裕、2死から初スタメンの亀山努、そして和田豊が連打して迎えた満塁の場面だった。「ガリクソンは強気に攻めてくる」。そんな“読み”は的中。1ボールから内角ストレートを左翼スタンドに運んでみせた。

翌26日の日刊スポーツ1面は、カメラマンの河南真一が、岡田がジャンプして右人さし指を夜空に突き上げた瞬間をとらえた。「岡田逆転満塁」「バンザイ甲子園」「今季最高5万5000人」「胸すく巨倒」と見出しが躍った。

さらにドラマがある。ちょうどその日の30年前の1959年6月25日は「天覧試合」が行われた日だった。ザトペック投法で打倒巨人に燃えた村山実が、太陽の男・ミスター長嶋茂雄にサヨナラ本塁打を浴びた。あれから30年がたち、村山が監督で岡田が借りを返した。

東の巨人、西の阪神。永遠のライバルはいきなり顔を合わせる。岡田は開幕戦の位置づけに「143分の1? そら、そうよ。勝つに越したことはない。トータルで勝つ? そうよ。先は長い」と言った。いよいよ連覇につながる熱い戦いのゴングが鳴る。(敬称略)【寺尾博和】