春の嵐に“新風”を吹き込んだ。巨人阿部慎之助監督(45)が阪神との開幕戦で監督初勝利を挙げた。3番右翼に抜てきしたベテラン梶谷が攻守で大活躍。3回に右中間の打球をスーパーダイビングキャッチで併殺に仕留めると、5回には1号2ランを放った。先発戸郷は6回無失点の好投。西舘、中川、大勢の新方程式で危なげなく逃げ切った。開幕戦当日の早朝、暴風雨の中、8キロ走を敢行した新指揮官がペナントレースを白星発進した。

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プレーボールの12時間前の午前6時15分だった。阿部監督が激しい雨風の音で目を覚ました。「6時45分出発でいつもよりは少し遅いかな。雨ニモマケズ、風ニモマケズの精神ですよ」。ランニングウエアに着替えて、自宅を飛び出した。験担ぎでもなんでもない。いつも通りの通常運転で日課は日課。暴風雨の中、8キロを走破した。

信念を貫いた大抜てきが監督初勝利をたぐり寄せた。「プロだから結果が大事。でも、プロセスはもっと大事だと思っている。取り組む姿勢をしっかりと見ていきたい」と固く誓う。

開幕3日前の26日、新外国人のオドーアが電撃退団。メジャー178発の実績もオープン戦では明らかな調整遅れを露呈した。遅れを取り戻すために早出や居残りで練習する姿は1度もなかった。

一方で守備のビッグプレーと1号2ランで開幕戦のヒーローを勝ち取った梶谷は、2月のキャンプは2軍調整も若手とともにやるべきことを地道に続けてきた。3月中旬からのオープン戦で1軍合流させ準備してきたことを結果で示した。

挑戦者として昨季王者に立ち向かい、開幕戦を白星で発進した。試合直後にマイクを向けられ「最高ですね。いや、最高ですよ」のフレーズは現役時代から健在だった。自信を持ってスタメンに起用した梶谷には「状態のいい選手を使っていこうと。やっぱり場数が違うなと、さすがだなと思いながら見ていた。素晴らしい」とたたえた。

第20代巨人軍監督の肩書と、その重責はとてつもない。大歓声を横目に「今日は今日ですからね。この1試合に勝つためだけにやっていないので。最後、優勝するためにやっている。その通過点かなと思います」と真顔で締めた。雨が降ろうと、風が吹こうと、明日もまた当たり前のように走る。今季はアレじゃなくてアベ。春の嵐に“新風”が吹き込んだ。【為田聡史】

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