“岡本どん”が薩摩の風を味方に付けた。巨人岡本和真内野手(27)が7回2死から2号ソロを放った。打球を強風に乗せて、鹿児島・平和リース球場では5戦3発目と好相性ぶりを発揮。5回1死二、三塁からは逆転の2点適時打を放つなど、チーム全3打点をたたき出した。幕末の英雄・西郷隆盛が生まれた薩摩の地で、主砲として、主将として、巨人を率いるリーダーが大暴れした。

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鹿児島の夜空に白球が高々と舞い上がった。1点リードの7回2死。岡本和がヤクルト、エスパーダの高め直球をかち上げた。左翼ポール際への滞空時間の長い打球は強い風に乗る。ポール際にギリギリ飛び込んだ。「本当に風にも助けられた。ちょっと高く上がり過ぎたなと思ったのですけど、乗って入ってくれてよかった」と風に感謝した。

鹿児島のシンボルである桜島を望む平和リース球場。その舞台で5試合で17打数6安打3本塁打5打点となった。好相性ぶりに「空気があっているんでしょう」。1点を追う5回1死二、三塁にも逆転2点適時打をマークした。打率3割7分8厘、9打点はリーグトップ。「今の時点の数字は気にしてもない。1試合1試合頑張っていきたい」と謙虚な姿勢のままだった。

主砲であり、主将として伝統球団を率いる。「自分のやるべきことをしっかりやって、周りを見ていけたら」と柔らかい物腰は変わらず、強い自覚でまとめる。6年連続30本塁打の実績にもおごらない。戸郷、大勢ら後輩にはタイトルを獲得した時にも、ご褒美を約束する。周囲が最大限に力を発揮できる雰囲気作りを心がける。

薩摩の地で生まれ、明治維新に導いた西郷隆盛はかつて言った。「世のすべての人からけなされても落ち込まず、すべての人から褒められてもうぬぼれるな」。人は親しみを込めて、「西郷どん」と呼んだ。

歴史の偉人の中でも、西郷隆盛は少し愛着がある。「僕のオトンがめっちゃ似てるって言われるんです」と笑い、鹿児島の夜風を感じながら、バスに乗り込んだ。「新風」を掲げるチームの中核。頼もしい“岡本どん”のバットで借金返済。薩摩の地から4年ぶりの覇権奪回の勢いを加速させる。【上田悠太】

▼岡本和が今季2号を含む3打点。鹿児島の平和リース球場は通算5試合目の出場で、本塁打は18年5月15日ヤクルト戦、19年4月16日広島戦に次いで3本目。平和リース球場で出た本塁打は通算116本目となったが、3本はリー、山本和範、大田卓司、片平晋作、トレーバーに並び同球場最多。過去5人はパ・リーグで記録しており、セ・リーグで3本は岡本和だけ。

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