広島3年目の若武者・田村俊介外野手(20)が、熱戦にケリをつけた。0-0の9回2死二塁で、阪神ゲラの155キロの直球をはじき返した。打球は背走する中堅近本の頭上を越えた。三塁まで激走すると、拳を突き上げた。プロ入り初の決勝打は、思い出の地・甲子園で刻んだ。

打席に入る前は、前打者の代打松山から直球の見え方を聞いた。「前の打席で僕が凡退してなかなか点が入らなかった。ピッチャーが抑える中で援護できなかったので、それがずっと悔しかった。最後、回してもらって決めれてよかった」。前日10日に4試合連続完封負けのトンネルから脱出し、チームは勢いに乗った。侍ジャパンにも選ばれた20歳の一打でカード勝ち越しに成功。4位に浮上した。

前日は8番だったが、この日は6番起用。新井監督は「もともと速い真っすぐに振り負けない力はある」と評価。ここ数試合、直球の対応に苦戦し試合前には室内でコーチと打ち込んだ。指揮官は「あの場面で本当によく打ったと思います」とたたえ、外野の好守備も挙げ「みんなの力で守り勝ったいいゲーム」と喜んだ。

愛工大名電3年時には、コロナ禍の中で甲子園に出場。「(当時は)スタンドにお客さんがいなかったので、圧がすごい」といいながら、4万人超の観客の前で試合を決めた。入団時、自腹で購入したデータ分析機器のラプソードを母校に寄贈した後輩思いの男。オフは母校で自主トレし、今春センバツ出場した後輩たちと汗を流した。この日聖地で活躍した姿を画面越しに後輩へも届けた。「明日からもしっかりつなげていけるように」。特別な1勝にした。【中島麗】