「4番ファースト清原君」が神宮にこだました。東京6大学野球が開幕し、慶大・清原正吾内野手(4年=慶応)が適時二塁打でリーグ戦初打点を挙げた。プロ通算525本塁打を誇る“4番ファースト清原”の父和博氏(56)もスタンドから見守る中で長男が勝負強さを見せ、試合も5-2で勝利した。プロも視野に入れつつ、まずは優勝へ突き進む。早大も立大に勝利した。

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組まれた父の手を、息子がほどいた。3回1死一、三塁。早々に追い込まれた清原正吾が低めカットボールに合わせ、振り抜いた。中越え二塁打。「よっしゃー!!」。スタンドの和博氏がこぶしを強くし、やがて拍手に変わった。

父の視線の先で、二塁上の長男は白い歯を見せた。「甘い1球を逃さないかだけに集中していました」。それが4番打者の仕事だ。この日朝、堀井哲也監督(62)から指名された。

「朝、監督から打順を告げていただいて、引き締まる思いで試合を迎えられて。4番としての仕事を。ただきれいなヒットじゃなくて、本当に泥くさいところまでやってやろうと」

妥協なく愚直に鍛えてきた。清原の長男と言われ、父の事件も重なった。「重圧があって、少し目を背けたくなって」。中学はバレーボール、高校はアメフトに挑戦。社会復帰する父の「生きる活力になれたら」と硬式野球に挑戦し、4番にまで上り詰めた。

異色の歩みにも「人生、人それぞれの色があっていいと思う」と明るい。だから佐々木麟太郎のスタンフォード大合格は震えた。

「いや、ほんっっとに素晴らしい選択だなと思います。僕、ニュース見た時に『うわっ、これは今までにないいいチョイスだ』って思って。ものすごく覚悟あっただろうと思うし、ほんっっとにすごいです」

強い共感と敬意を示す清原もまた、新時代を担うアスリートだ。プロの世界も夢見つつ「最高の仲間と最高のチームで日本一を取って、後悔ない1年を」と願う。それより何より、まずは14日の2回戦。母亜希さんの誕生日だ。「バースデーアーチ打てたら、最高の思い出になるだろうなと思って」。自分より、仲間のため、家族のために頑張ってきた。【金子真仁】