村神様の1発は、忘れられない日に生まれた。ヤクルト村上宗隆内野手(24)が、開幕54打席目で今季1号をマーク。今から8年前の16年4月14日に、故郷・熊本で大規模な地震が発生。「なかなか野球ができない期間もありましたし、こうやって元気に野球が出来ているのはすごく感謝しないといけない」と、ふるさとを、日本を思い、バットに思いを込めた。

確信を持って、ゆっくりと歩みを進めた。村上は一塁を回ると、右拳を力強く突き上げた。0-0の1回1死走者なし。DeNA先発大貫の外角143キロ直球を捉えた。開幕から54打席目、13試合目で今季初のダイヤモンド一周。二塁を蹴ると、燕党が待つ左翼スタンドへ右手で呼応した。「今日で熊本地震からだいぶ前の話ですけど、月日がたってるので、野球ができる喜びとファンの皆さんへの感謝の気持ちを持ちながらと思っていました」と自ら、あの日を切り出した。バックスクリーン左端直撃弾という豪快な1発は、ふるさとを思う純粋な思いから生まれた。

くしくも、あの悲劇と同じ日だった。16年4月14日に、故郷・熊本で大規模な地震が発生。同16日にも大きな揺れがあり、観測史上初めて最大震度7の激震に2度襲われ、関連死を含めて熊本、大分両県で276人が犠牲になった。当時、九州学院2年生だった村上も下校中に被災。あの日を知るからこそ、プロ3年目からは熊本城復旧のための義援金を始めた。だからこそ、言葉の重みが違う。

村上 常に打ちたいと思っていますけど、今日という日は今日しかないので、いろんな方に熊本地震だけじゃなく、いろんなところで地震もありましたし、被災された方にスポーツの力を届けられたらなと思います。

人生初の2番に入った前日13日の試合に続き、この日も2番に入った。令和初の3冠王だからこそ「こうして打てないと騒がれますし、それも目に入ってくるものなので」。常に期待される重圧の宿命を超え、自己も超えた。神様が、この日に打たせてくれたのかもしれない。【栗田尚樹】

ヤクルト高津監督(村上の1号について)「ああいう当たりを見せられると、ムネの打球だなと思いましたね。気分的にスッキリしたんじゃないかなと。みんなが望んでいたというか、もちろん本人が一番うれしかったでしょう」

◆村上の四球 今季ここまで13試合の出場で15四球。1試合1個以上のペースで選べており、セ・リーグでは唯一の10個以上と断トツだ。打率2割8分6厘は1位岡本和(巨人=3割8分9厘)と1割以上の差で10位ながら、出塁率4割8分3厘は岡本和(4割6分8厘)を上回って12球団トップ。

【動画】お目覚め!ヤクルト村上宗隆1号 54打席目でついに出た バックスクリーン直撃弾