村上の力投を無にしたくなかった。阪神森下翔太外野手(23)は0-1の6回1死一塁で、ジャクソンの落ちる変化球を強振。左翼線に痛烈なライナーを飛ばした。一塁走者の中野は三塁を回って止まったが、中継が乱れるのを見て再スタートし、同点のホームを踏んだ。この1点で、苦しめられた右腕をマウンドから引きずり降ろした。

「勝てはしなかったけど、粘りの野球ができたのでよかったと思います。甘く来たボールを、うまく芯でとらえられました」

自身ハマスタ初長打となる二塁打。打点こそつかなかったが、リーグ2位タイ13打点を誇る3番打者が、また得点に絡んだ。その姿は1年前とは見違えた。昨年4月16日、同じ横浜スタジアムで3三振し、2軍行きを通告された。「進化した自分を見せたい」と意気込んだ今年初の横浜遠征で、堂々たる打撃を披露した。

横浜は地元だ。東海大相模時代にも使用した慣れ親しんだ球場だ。ただ、昨年はDeNA独特の応援に、のまれていたと素直に振り返る。「それをはねのけるようなメンタルと、実力を示したい」と決意していた。初回にジャクソンから放った中前打で7試合連続安打。6回の二塁打で今季6度目マルチ安打だ。この期間は24打数11安打と、打線に欠かせない働きを続けている。

「しっくり来なかった時でも次の日には動画見たりして修正していたので、それが結果的にヒットにつながっていると思う。まだ序盤ですが、オフにやってきたことが形になって出てきている。あとはチームが勝てば。それを引っ張れるように頑張りたい」。主軸の自覚を示して、2戦目へ切り替えた。【柏原誠】