オリックスの宮古島キャンプに来訪中の野茂英雄テクニカル・アドバイザー(TA=40)が7日、フリー打撃に電撃登板した。

 突然の「竜巻」襲来だった。日本でプロの打者と「対戦」するのは96年日米野球以来。紅白戦後、野茂TAがL字形ネットの置かれたマウンドに向かう。大きく胸を張って振りかぶり、上体を深々ねじってピタリと静止。1人目の打者北川に直球を投げ込んだ。2巡目に入った21球目だった。北川に対しての最終球は直球の軌道からストンと沈んだ。腰を砕かれた北川の打球は右への力ないファウル。フォークのキレ味も現役時をほうふつとさせるものだった。北川は3打席目の最終球でもフォークを打たされ内野ゴロ。「あ~!」と悔しがった。

 3人に計48球。フォークは6球、カーブ4球。ボール球は9球。安打性の打球は12~13本でサク越えは許さなかった。近鉄時代を知る佐々木チーフ投手コーチは「当時と比べたら100点満点で20点」と辛口だったが、ブランクを差し引いても「さすが」の投球だ。

 前日6日、大石監督に「投げさせてもらってもいいですか」と志願。この日朝、再び申し出た。北川は「本当に幸せ。言葉にならない。ボールが重かったし、違う意味の重さも感じました」と感服した。大石監督は「ぜいたくな打撃投手でしたね」とニンマリ。実は野茂TAは宮古島入り後、指揮官に「監督、もっと面白いこと言わないと新聞記事が大きくならないですよ」と“苦言”していた。文句なしの極上エンターテインメントだった。【柏原誠】

 [2009年2月8日9時15分

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