メンチ・レーザーが赤星を刺した!

 2日の紅白戦で右翼を守った阪神の新外国人ケビン・メンチ外野手(31=ブルージェイズ)が強肩を見せつけた。初回無死一塁の場面で、二塁手をかすめる打球を素手で拾い上げ、すばやく送球。一塁から三塁を狙ったチーム一の俊足赤星を鮮やかに料理した。ワンバウンドだったため正式には「レーザービーム」とは言えないが、巧打&激走が持ち味の新助っ人にもう1つの武器が加わった。

 二塁を蹴る赤星を視界の隅にとらえて、メンチは舌なめずりした。球界屈指の快足ランナーを串刺しにするチャンス!

 二塁手藤本をかすめて外野芝生を転がる白球(記録は藤本のエラー)を右手で拾い上げると、レーザービームの発射態勢を整えた。三塁までのワンバウンド返球をずばりと決め、塁審のアウトコールににやけた。

 「一生懸命に投げたから疲れた。キャンプではまだ満足いくところまで仕上がっていないけど、これからゲームで調整したい」

 スピードに乗った足の運びから上体をかぶせるようなモーションで、地をはう送球を投じた。右翼手の最高の見せ場を一発で飾った。オープン戦、紅白戦の実戦で、チームは積極的走塁を方針としている。メンチ自身も2月21日の紅白戦で三塁コーチの制止を振り切り本塁に突入した。

 ただこれまで、好走塁が目立っても、制する側の守備は不調だった。それだけに、キャンプ打ち上げ前日の紅白戦でみせた助っ人の強肩プレーが際立った。

 「投げるのもそうだけど、(二塁手が)後逸した打球をあそこまでバックアップにいっていたから、刺せたのだろう。できる選手は自然とできるんやね」

 真弓監督が感心したのは、正確なスローイングの前に見せた位置取りと打球に対する集中力だった。フリー打撃など練習中は私語が多く「おしゃべりが長い」と助っ人の陽気さに顔をしかめる場面もあった。だが、メンチはゲームに入れば、別人のように打球に食らいつき、投球に食らいつく。

 来日前の1月から「キャッチボールとランニングはしっかりしてきた」と言う。初体験となる日本のキャンプで打撃の調整に専念できるよう、米国で守備の動きを仕上げていた。これまでの助っ人とはひと味違う、準備ができる男。2月14日にヤクルトとの練習試合でソロを放った打撃以上に、守りでチームに貢献できることをひと投げで証明した。【町田達彦】

 [2009年3月3日12時29分

 紙面から]ソーシャルブックマーク