<広島1-12阪神>◇25日◇マツダスタジアム

 メモリアル勝利は、今季自身初勝利となって手元に届いた。最後の打者喜田が三振に倒れると、ベンチで戦況を見守っていた福原忍投手(32)は、笑顔でナインとハイタッチ。地元広島で先発勝利投手に輝くのは、プロ11年目で初のことだった。

 福原

 なかなか自分で思った投球ができずに、ふがいない日が続きましたからね。先発では地元初勝利?

 本当?

 知らなかった。やっぱり地元で勝てるのはうれしいね。

 史上317人目となる1000投球回数も同時に記録し、福原にとっては忘れられない1勝となった。

 変化球を丁寧に低めに集め、凡打を量産した。2回から6回まで、15アウトのうち10個が内野ゴロ。まさに“ゴロキング”と化し、勝利につなげた。「野手のみんなが打ってくれたから。自分はリズムよく投げるだけだった」。初回に4点の援護を受けたが、2回以降も着実に加点していったのは、福原が内野の足を動かし続けたことが要因の一つ。チーム16安打中、内野陣だけで11安打を放ったのは、単なる偶然ではない。

 昨季は右人さし指の骨折もあり、シーズンの大半を棒に振った。成績も3勝止まり。悔しさにくれた。ただ、その思いをぬぐい去るには、結果を出す以外にない。オフには寒風吹きすさぶ鳴尾浜のブルペンで黙々と投げ続け、出直しを図った。自身の投球フォームをDVDに収め、何度も見直した。年明け、鳴尾浜のブルペンに真っ先に入ったのも、この男。オフに初めて取得したFA権を行使せず、残留したのも、このチームで復活を期する思いが強かったからだ。今季初勝利まで4試合も要したが、地道な努力は必ず報われることを、結果で示した。

 高校時代から慣れ親しんだ広島市民球場での登板は、新球場が完成したことで、昨季限りで消滅。厳密に言えば、ここ数年は相性の悪い球場となっていたことを理由に、広島市民球場で起用されることはなかった。150キロ台の剛速球を生み出し、プロの道へと通じた思い出の残る球場。プロでは先発として1勝もできなかったが、新しく生まれ変わった地元広島での“聖地”で、福原もまた新たな投球スタイルを確立してみせた。116球のうち直球はわずか39球。この数字が、それを物語っていた。【石田泰隆】

 [2009年4月26日11時33分

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