<阪神5-6巨人>◇2日◇甲子園

 首位を走る巨人は阪神4回戦(甲子園)で坂本勇人内野手(20)がプロ入り初の1試合2本塁打の大暴れで、9連戦の初戦を白星で飾った。4回、先発能見から左翼席へ一時は逆転となる2号3ラン。同点の9回には守護神藤川から決勝の3号ソロを左翼席へ運んだ。今季5度目となる3安打猛打賞で打率はセ・リーグトップの3割9分8厘へ上昇。進化する「恐怖の8番打者」の活躍で巨人は阪神戦の連勝を10に伸ばし、2位広島、ヤクルトに3・5ゲーム差とした。

 同点の9回、ピンと背筋を伸ばした先頭坂本がカウント1-1からバットを振った。守護神藤川の「火の玉」と表現される151キロ速球だった。剛球に比例した甲高い反発音。左翼席へ刺さった決勝アーチを見届け、ベンチでは祝福を受け照れ笑いを浮かべた。「藤川球児さんの球を、いつか打ちたいと思っていた。素直にうれしかった」。忘れられない勝ち越し3号ソロで、阪神戦10連勝を決めた。

 4回にも試合の流れを引き戻す3ランを、左翼席に放っていた。プロ初の1試合2発で、首位打者に返り咲いた。3年目で何が変わったのか-。09年版坂本の進化を物語るデータがある。今季放った全35本の安打コースで右方向には4本しかなく、残り31本の打球は中堅から左だ。

 春季キャンプ。昨年フル出場した経験から長短所を認識し、独特の打撃理論を導き、苦手な外角球の対策に取り組もうとしていた。

 坂本

 インコースはそんなに苦にしない。問題は外角です。泳がされてボテボテが多かった。外角いっぱいのボールに対して、腕を伸ばして外からバットを出して、レフトへ打つ練習をします。

 元来、利き腕は左。左腕が伸び切った状態でもリードが強いから、引っ張れる。外角球に対しては逆らわず流すのがセオリーだが、「どちらの腕で打つのか」を考えた結果、左腕の力を生かすことができる外角球も左へ打つ打法を身につけた。

 打撃練習では外角球を左方向へ徹底して打った。バットが体から離れるため特に体の軸を意識し、「軸を残し動かないように」と真後ろからティー打撃の球を上げてもらった。約3カ月がたち、その効果は結果として出ている。

 昨年の課題を克服しつつある若手成長株が、伝統の一戦で貴重な2つの放物線を描いた。坂本は「振り負けず、振り切れました。強く、はあまり意識していない。しっかりミートすればホームランになる。レベルアップしてるのかも」と話した。原監督は「きれいな、価値あるホームランでした。去年の経験を生かし野球に取り組んでいる」。さらに「阪神戦10連勝?

 我々は過去でメシは食えない。今日が終わったら、明日しかない」と坂本が自力で切り開く道をチームになぞらえ締めくくった。【宮下敬至】

 [2009年5月3日9時39分

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