西武のドラフト1位ルーキー菊池雄星投手(18=花巻東)が、キャンプ初日から全力投球を披露した。1日、宮崎・南郷キャンプでブルペン投球を行い、直球にスライダーを交えて86球の本格投球。ラスト10球は本番を想定した推定140キロ超の速球を連発し、初めて投球を見たプロ審判もうならせた。

 ロージンバッグを触って間を取る。雄星は、目に見えない打者と勝負していた。他の投手は先に投げ終え、キャンプ初日の室内ブルペンは、完全に雄星の独り舞台。審判は4人もついた。あこがれの工藤らナインも見守るなか、エンジン全開の剛球が何度もミットをたたく。「最後は実戦と一緒です。今の100%を出せたと思います」とストライク、ボールをカウントした本気のラスト10球で、モノの違いを見せつけた。

 息をのんで見守った渡辺監督は、満面の笑みで言った。「力が入って球数も多くなったけど、注目された中でも堂々として集中できる。右打者の内角にクロスするボールの角度がいい。片りんが1球でも見られればと思ってたけど、たくさん見られたね」。受けた5年目の吉見は「140キロ以上出てた。ホップする球の質がいい。(ロッテの)成瀬みたいに球の出どころが見にくい」とうなった。

 座らせて62球を投げた後、59センチの帽子を58・5センチに替えてかぶり直すと、投球が一変した。キャンプ前に散髪し「サイズが大きくて。(替えたら)フィットして全力でいけました」という言葉通り、ギアチェンジした。秋村謙宏審判員は「急に力を入れた時は、勢いがあってビックリした。投げ方がきれいでコントロールも良い」と苦もなくストライクをとれる制球力にも目を見張った。

 朝の球団発表では、ブルペンに入る予定はなかった。「昨日言い忘れちゃったんです。今日コーチに言って入りました」という急な展開に、周囲も大慌て。評論家の江本孟紀氏(62)は雄星が投球しないと聞いて車で帰りかけていたが、緊急登板を知ってとんぼ返り。お騒がせの“アポなし”投球でも、圧巻の内容で黙らせた。「これなら打たれないっていうボールが自主トレの時は10球とか20球に1球だけ。今は5、6球に1球いくようになってきたので、あとは確率を上げていくだけです」。立ち投げ65球、座らせて86球の大熱投。キャンプ初日から主役を張った左腕は、言葉の端々に自信をのぞかせた。【亀山泰宏】

 [2010年2月2日8時37分

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