ソフトバンクは27日、村松有人外野手(37)が今季限りで引退すると発表した。28日に会見を開く。この日福岡で降った雨は、村松との別れを悲しむ涙雨だったに違いない。2軍練習場の雁の巣球場で行われる予定だった練習試合が中止となり、急きょ代替の「引退セレモニー」が行われた。

 雨の中、仲間が守備に就いた。ゲーム形式の打席に立ち最後の一打。打球は平凡な当たりだったが、ベースを1周。ホームインは、最後のヘッドスライディングだった。胴上げをされ、家族からは花束を贈られた。華やかな舞台に上がるのを好む方ではない。全力で打って、全力で走る。ベースへ一直線に頭から飛び込むスライディング。プレースタイルは、まさに愚直そのもの。ひっそりと現役生活にピリオドを打った。

 プロ20年を全力で駆け抜けた。今年1月。1歳年上の主将小久保との米アリゾナ自主トレに志願参加。帰国後に言った。「あと3年はやるで」。40歳現役を目指し、体重を2キロ増の83キロとするなど、パワーアップして今季に臨んだ。が、思うように結果は出なかった。今季開幕1軍は果たしたが、1軍出場は3月22日の日本ハム戦1試合のみ。主力選手として活躍し始めた95年以降では最少だった。

 ダイエー時代の3度の優勝に貢献した。特に03年は打率3割2分4厘の好成績を残し、日本一の立役者となった。03年オフにFA権を行使してオリックスへ移籍したが、08年オフにトレードで再びホークスに復帰。明るい性格でムードメーカーでもあった。96年に58盗塁して盗塁王を獲得。球団は様々の功績を評価し、今後はフロント入りするプランが上がっている。

 28日、自らの言葉で、支えてくれたファンやお世話になった人へ、村松が感謝のコメントを送る。

 [2010年9月28日11時12分

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