<日本ハム3-2西武>◇16日◇札幌ドーム

 頭が高い!控えおろう!

 日本ハムの新外国人ボビー・スケールズ内野手(33)が2戦連発で3連勝へ導いた。1点を追う3回に左翼席へ3号同点ソロ。鮮やかな逆転勝ちへの起点をつくり、チーム30年ぶりの西武戦7連勝を飾る原動力になった。時代劇「水戸黄門」の名物キャラ「助さん」にあやかったスケさんが愛称。シリーズ打ち切りが判明してから一夜明けたこの日、黄門様への惜別弾をかけた。目指す2年ぶりV奪回へのドラマを演出する名脇役になる予感が漂ってきた。

 救世主のスケさんが、ハッピーエンドへの使者になった。スケールズがニックネームそのまま、2戦連続でお助けマンになった。2回に1点を先制され、嫌なムード満点の3回。2死無走者から突如、シナリオを変えた。水戸黄門をほうふつとさせる駆け引きで、完璧な仕事だ。メジャー通算9本塁打のスケさんが、メジャー39勝の石井一に食い下がる。

 初球。「この紋所が眼に入らぬか~」とばかりにインロー(内角低め)のカーブを、突きつけられた。誘い球にピクリともせず、見逃し。続く2球目、カウント1ボールから内角高め138キロ速球を強振。左翼席中段まで運ぶ3号同点ソロをかけた。スケさんは「本塁打を打つタイプの打者じゃない。自分はあくまで中距離打者」。役柄そのものの謙虚な一振りで、流れを一変させた。

 6回にはスケさんの名付け親であるとされる稲葉が奮闘。左越え適時三塁打などで勝ち越しに成功、接戦勝利の名脇役になった。「北海道祭り」と銘打った、今3連戦。球場へ浴衣姿の女性客が多数、来場中だ。お色気ムンムンの入浴シーンの由美かおるさながらに、肩の辺りをはだけて狂喜乱舞の白星。前夜に満塁弾をかけたスケさんが、この日も老若男女を酔わせた。

 「人生楽ありゃ苦もあるさ~」を、地で行く野球人生で転機を迎えた。米球界入り後からマイナーで10年以上を過ごし、31歳でメジャーデビューの苦労人。再びマイナーで、くすぶっていたところを、日本ハムがリストアップした。「どのリーグでも出る自信はあった」と飢えていたところで、もらったチャンス。カブス時代の同僚ホフパワーが「格さん」の愛称で「助さん

 格さん」でチーム内に浸透中。不振の「格さん」も触発されて8回に代打で安打。こよなく愛する野球を極めるため、異国で新たな旅は輝き始めた。

 球団関係者の計らいで、すでに「水戸黄門」の動画はチェック。佐藤通訳は「ボディーガードと伝えてます。さすがに『黄門』とか訳せません…」とうれしい悲鳴だ。物語の意図は難解すぎて説明できずにいる。また不吉なため、シリーズ打ち切りになることを伝えていないという。でも、スケールズはなぜか気に入っているという。かつて打ちのめされてきた球団史を変える、節目の1勝。2年ぶりリーグ制覇で華麗な時代劇完結へ-。真の常勝球団へと向かう1年に立つ日本ハムに、スケさんがお供する。【高山通史】