巨人宮崎春季キャンプ第3クール2日目の12日、スコット・マシソン投手(27=フィリーズ)が初めてフリー打撃に登板した。セットポジションの静止などを確認しながらの59球だったが、直球は151キロを計測した。

 荒々しい59球の中に、151キロの直球があった。スプリット、スライダーは制御に苦しみボール22球だったが、バナナの軌道だった。「初めてバッターに投げたが、良かったんじゃないかな」。空振りを奪える球威と変化。マシソンが抑えの資質をのぞかせた。

 マシソンは猿の子孫だった。「バナナを食べるのが日課なんだよ。1日5本くらいだね」。練習中に3~4本。帰りには右手に1本。練習中に食べきったらパイナップルに変わるが、バスの中での5本目が至福の時だ。フィリーズ時代はロッカールームにミキサーを持ち込んで、バナナジュースを飲んでいた。今度の休日は、宿舎内の喫茶店でミキサーを拝借するプランもある。

 大・大好物かと思いきや、実は涙ぐましい過去があった。「手術をしたとき、先生から『体にいいから、バナナを食べるといい』と言われて。それ以来、守っているよ」。2度のトミー・ジョン手術を経験している。忠告をけなげに守り、球威を取り戻して巨人入りのチャンスをつかんだ。

 マシソンは熊の子孫でもあった。カナダ・バンクーバー出身。初めての日本キャンプに、名産であるメープルシロップの大瓶を大量に持ち込んだ。興味を示した選手には、部屋の前にそっと置き、プレゼントする。「カナダ出身ってことを、知ってもらいたくって。あいさつ代わりのつもりだよ」と明かした。「あんなに紳士な外国人選手は見たことない」と感動した投手が続出。心優しいプーさんの血筋を継いでいる。

 練習熱心でいつも遅く帰る。「野球が好きだから練習が長いのは歓迎。投内連係とか、細かい練習も新鮮だよ」と模範回答だ。この日のフリー登板は「1回しかやったことない」という、目の前にネットがある中での151キロだった。“オリ”から野に放たれる16日の紅白戦で、最速158キロマシソンの本領が分かる。【宮下敬至】