<楽天6-7ソフトバンク>◇5日◇Kスタ宮城

 ソフトバンクの新外国人レニエル・ピント投手(29)がデビュー戦で初勝利を挙げた。楽天戦で5回4安打2失点。楽天星野監督から“不正投球”の疑惑をかけられる陽動に負けず、5四死球、110球と苦しいリズムながらチームの連敗を止めた。ペニーが右肩痛で離脱した日に助っ人左腕が存在感を出した。

 しゃべりっぷりは196センチ、119キロの巨漢に似合わない。日本で受ける初のヒーローインタビューは、ピント本人より松本通訳の声が大きかった。それでも「打線の援護があって勝てた」と仲間を立て、「ボールはチームメートにサインをもらって記念にとっておくよ」と優しい人柄がにじむ言葉が並んだ。

 デビュー戦は5回4安打2失点。結果の上ではうまく抑えた。ただ「打者に粘られたし、自分の調子がよくないのもあった」と5四死球、110球も費やす苦しいマウンドだった。序盤はスライダーを操れず、女房役の山崎がミットを右へ左へと大忙しだった。

 2回1死一塁では星野監督に“不正投球”の疑惑をかけられた。指先に額の汗をつけて投げていると、柳田審判員から投球までの動作を確認された。直後のピントは「何のことか分からなかった。集中していたけど、乱された部分があった」と連続四球でピンチをつくり、聖沢に同点適時打を許した。秋山監督は「ずっと汗、かいてっからな」とこの“抗議”にムッとしたが、その後のピントは3回に牧田にソロを被弾した以外は大崩れしなかった。

 昨年は所属球団がなく、個人トレーナーの指導を受けながら調整して、日本球界に挑戦した。妊娠中のジェシカ夫人は母国ベネズエラに帰国中で、本拠地では自炊の毎日だ。とうもろこしの粉から作るアレパと呼ぶパンが大好きで、夫人に材料を空輸してもらい、「自分で生地を練ってつくるんだ」。優しい味と母国、家族を思い出す国民食をエネルギー源に戦っている。

 最速146キロの直球で相手のバットをことごとく詰まらせた。球威はある一方、変化球はスライダーとチェンジアップだけで、高山投手コーチから「もう1つ決め球になるものがあればいい」と指摘もあった。肌寒い仙台で連敗を止めた左腕は、また素朴な口調で言った。「これからもしっかり自分の仕事をして、勝利に貢献したい」と。【押谷謙爾】