<阪神6-10楽天>◇20日◇甲子園

 試練の甲子園デビューとなった。楽天のドラフト2位ルーキー釜田佳直投手(18)が、プロ初登板初先発となった阪神戦で、3回5安打3失点(自責1)。直球は自己最速タイの153キロをマークするなど速球派を証明してみせた。星野監督の粋な計らいでの聖地デビュー。勝ち星はつかなかったが、チームは逆転勝ちで阪神に連勝。貯金を今季最多の3とした。

 甲子園にざわめきが起きた。1-1の1回1死二、三塁、釜田は5番新井貴と対峙(たいじ)した。4球目、こん身の外角直球はファウルとなったが、最速153キロをマーク。失策にも足を引っ張られ、この回3失点したが、150キロ超の直球がうなった。金本、新井貴らに堂々と勝負した。「個人というよりピンチだったので、力が入りました。思ったより緊張しませんでした。すごくいい経験ができました」と初々しく振り返った。

 用意された舞台だった。9カ月前には注目を浴びた甲子園に、戻ってきた。昨夏、金沢高のエースとして出場。デビュー戦の地に星野監督から指名されたのは、聖地のマウンド。交流戦前、1軍に合流した時は、中継ぎ起用かと思われた。実は指揮官があえて煙幕を張ったからだ。過度のプレッシャーをかけないようにという親心。午後1時開始の2軍戦に合わせ、デーゲームだった「5・20」が選ばれた。2軍でバッテリーを組んでいた小山桂がマスクをかぶるなど、投手出身監督ならではの配慮だった。

 評価されるのは技術だけではない。昨夏甲子園の中継を見た星野監督から「打者に向かっていく姿勢がいい。今のやつにはないものを持ってる」と一目置かれている。それでも試合前、「今日は打たれるのを覚悟で投げさせる」(同監督)。阪神ファンで埋め尽くされる異様な雰囲気での登板を経験させたかった。

 不運な失点で降板したルーキーに白星をつけようと、打線が奮起。2点を追う3回、フェルナンデスの適時打で同点。「ルーキーの力になりたかった」と4番が言えば、4安打4打点の銀次も「楽にさせてあげたかった」とうなずいた。16安打10得点で阪神に連勝した。釜田に勝ちはつかなかったが星野監督は「立派なもんだよ。まだまだチャンスはあげる」と目を細めた。次代のエースとして期待される右腕には、次の舞台も用意されている。【斎藤庸裕】