<日本ハム3-2ヤクルト>◇16日◇札幌ドーム

 日本ハム中田翔内野手(23)が究極のレーザービームでサヨナラ勝利を呼び込んだ。ヤクルト戦の9回1死三塁、森岡の左飛で勝ち越しホームを狙った比屋根をワンバウンドのストライク返球で刺し、リーグトップに躍り出る補殺でピンチを救った。チームはその裏1死満塁から、代打ホフパワーの中犠飛で今季4度目のサヨナラ勝ち。交流戦優勝はならなかったが、貯金を再び「10」とし、首位ロッテとの差を1ゲームに縮めた。

 “陰のヒーロー”中田は、全速力でベンチを飛び出した。俊足の陽岱鋼には後れを取ったが、2番手で、サヨナラのヒーロー・ホフパワーに飛びかかった。「今日のような勝ち方は勢いがつく」。自らの一打のように、うれしさを爆発させた。

 劇的な結末の始まりは、間違いなく中田のプレーだった。同点の9回1死三塁。森岡の打球は、前進守備を敷く左翼手中田の元に飛んだ。「飛んで来い、飛んで来いと思っていた」。見せ場がやってきた。タッチアップで本塁を狙うのは、50メートル5秒9の俊足を誇るヤクルト比屋根。視線の隅で、スタートを切っているのが見えた。勝負だ。「力んでは本来の自分の肩を生かせない。冷静になれた」。ワンバウンドで捕手鶴岡のミットへ。比屋根の足は、まだ本塁1メートル手前にあった。

 大阪桐蔭時代は最速151キロをマークした剛腕。右ひじや肩に故障を抱え「ケガがあったから投手はあきらめた」が、今でも肩の強さはチーム一、二を争う。ややサイドから腕を振り、球にスピンがかかる癖を矯正するために、キャンプではスローイングに定評のある金子誠と組んでキャッチボールを繰り返してきた。清水外野守備走塁コーチも付きっきりで指導。「いつもアドバイスをもらっている。そのおかげ」。中田も感謝を忘れない。

 守備へ対する意識の変化もある。3日の阪神戦。浅い左飛をランニングキャッチし、さらに飛び出した一塁走者を刺して併殺を奪った試合だ。その直前、中田は左翼で守備位置を変更していた。入団時から指導を続けてきた清水コーチも「こっち(ベンチ)から指示がなくても、自分で動いた。そんなことは初めてだった」とうれしそうに目を細めた。中田は「打者のスイングや投球を見ていると、だいたいどっちに来そうというのは分かる」と言う。入団から三塁や一塁も守ってきたが、今ではプロの外野手として、他球団がうらやむ鉄壁の外野陣の一翼を担っている。

 1回には先制適時打を放ち、今季最長の6試合連続安打とした。

 中田

 何試合連続とか、興味ない。そのためにやっているわけじゃない。バッターだし、打つのはうれしいけど、守備は周りと比べて自分は下だった。それが当たり前にできるようになってきているので、うれしい。

 アマ時代から世間の注目を集めてきた和製スラッガーが、またひとつファンを魅了する武器を備えた。【本間翼】