<楽天7-5ロッテ>◇24日◇Kスタ宮城

 天国の母にささげる7球だった。楽天長谷部康平投手(27)が7-4の8回1死走者なしで、4番手として登板。打者2人を完璧に抑えた。ベンチに帰ると号泣した。22日に母泰子(やすこ)さん(享年53)を亡くした。この日、故郷の岐阜では告別式が行われたが、前日23日に通夜に参列し、首位攻防第2ラウンドのロッテ戦に駆けつけた。気持ちのこもった投球でつなぎ、チームは2連勝。今日25日にも、球団史上初となる優勝マジックが点灯する。

 好投しても、長谷部はうつむき加減にマウンドを降りた。3点リードの8回1死だった。代打岡田を二ゴロ。鈴木からは見逃し三振を奪った。最速144キロの直球中心に、ストライク先行で封じ込めた。チームメートから声をかけられ、ようやく笑ったが、ベンチに座ると我慢できなかった。端の方に座り、下を向いた。涙があふれ出た。斎藤がかけより、肩を抱いてくれた。

 22日に母泰子さんを病気で亡くした。「母親に頑張っているというのを見せたいと、気持ちを込めて投げました。いいボールがいったと思います」。降板後は落ち着いた様子で、気丈に答えた。本来なら勝利投手がもらうウイニングボールを最後を締めた斎藤から手渡されていた。「機会があれば、仏壇に持っていきたいです」と見つめた。

 訃報に接し、22日に仙台から故郷の岐阜に戻った。翌23日からは2位ロッテとの首位攻防3連戦が控えていた。当初は「ロッテは良い左打者が多い。穴をあけたくない」と、中継ぎ左腕としてチームに残ることを希望した。最後は、球団と星野監督の「行ってこい」の声に送り出され、通夜に参列。告別式には出ず、この日の朝には仙台に戻ってきた。球場入り後、試合前練習では笑顔も見せた。「昨日、一昨日と、じっくり語り合ってきました。後は兄弟に任せて。こっちも大事なので」と言った。大事な一戦で、星野監督に「頑張るだけだぞ」と言われた。期待に応え、仕事をやり抜いた。

 4点ビハインドをひっくり返しての勝利。星野監督は「今日はリリーフが良かったから勝てた。長谷部は良いボールを投げていた」とねぎらった。夏場を迎え、「これからは、ここ」と左胸をたたいた。その言葉どおり、長谷部が魂のこもった投球で勝ちを呼んだ。今日25日にも、球団初の優勝マジックが点灯する。【古川真弥】