キャッと驚く火の玉ストレート!?

 中日ドラフト1位の鈴木翔太投手(18=聖隷クリストファー)が21日、入団後初となる投球練習を行った。捕手を立たせたままでも、打者の手元で伸びる直球でエース候補の資質を十分に示した。高回転数を生む独特の握りを「猫のツメ」と表現して披露。カブス藤川球児投手(33)の握りにも似た投法で、にゃんとも将来性たっぷりだ。

 こたつで丸くなっていられない。衝撃のデモンストレーションだ。5人並びのブルペンのど真ん中。鈴木翔は“センターポジション”で、投球練習をスタートさせた。長い手をしならせたゆっくりとしたフォームから、リリースの瞬間にすべての力を指先に集約。糸を引くようなボールが捕手のミットに収まった。

 時間にして10分。わずか24球だったが、能力の高さを証明するには十分だった。2人の捕手が口にしたのは球質の印象だ。最初に受けたドラフト3位桂依央利(22=大商大)は「あまり力を入れていないけど、指にかかったときはしっかりスピンする」。途中で替わった吉田ブルペン捕手は「ほんとにすごい。伸び上がる感じ」と仰天した。

 独特の球質の正体とは?

 鈴木翔は理想の直球について「回転数を多くして、手元で伸びるようなストレートを投げたい」と語った。ボールに強烈な縦回転をかけることで、球速があまり落ちず、打者には“ホップ”して映る。まるで阪神の守護神として活躍したカブス・藤川の「火の玉ストレート」のようだ。

 共通するところはある。鈴木翔の直球を投げる際のイメージはこうだ。「猫のツメのような感じで、最後にガッと力を入れる」。指をべったりボールに密着させず、指先でボールをつかみ押し込む。ボールと指の間には隙間ができる。この部分が、藤川の直球の握りに似ているのだ。

 スピードガンでは測れない「キレ」や「伸び」は、回転数によるものと言われる。現役最年長の山本昌も回転数の多さは球界でも有名。大ベテランは回転数を増やす方法を「握りというよりも、いかに体の前でたたきつけることができるかだけど…」と解説。鈴木翔のブルペンを見ることはなかったが、その様子を聞いて興味津々だった。

 天性の野球センスを持つ18歳のフォームは、誰もが「きれい」と口をそろえる。それでいて「分かっていても打てない」-。猫かぶりしないストレートをぶん投げ、大忙しのスターになる。【桝井聡】<鈴木翔太(すずき・しょうた)アラカルト>

 ◆生まれ

 1995年(平7)6月16日、静岡・浜松市生まれ。

 ◆球歴

 北浜東部中時代は硬式の浜松シニア。聖隷クリストファーでは1年夏から公式戦に登板し、2年夏には同校初の静岡大会4強入り。甲子園出場なし。

 ◆超VIP応援団

 昨年11月、浜松市内での仮契約で自動車大手スズキ(本社・浜松市)の鈴木修会長とばったり。球団関係者を通じて会話し、固い握手で激励された。

 ◆会社の看板

 商売道具のグラブ、スパイクは三共スポーツ(本社・東京都)が展開する「シュアプレイ」を愛用。プロでも数人しか使用していないブランドで同社関係者は「アピールしてほしい」と期待。

 ◆サイズ

 183センチ、74キロ。右投げ右打ち。