<DeNA6-5ソフトバンク>◇29日◇横浜

 インパクトにありったけの力を集めた。打った瞬間、確信してバットを高々と放り投げた。ソフトバンクは6年ぶりの3試合連続延長戦の末、今季3度目のサヨナラ負け。それでも光ったのは吉村裕基外野手(29)だ。8回に今季1号となる同点2ランを放った。2死一塁から8番鶴岡への代打で左翼席上段へ。古巣からの初アーチで「12球団制覇弾」を達成。全打順も含めると史上初の1発となった。

 「打ったのは真ん中のスライダー。(打球が)切れるかなと思ったけど、入ってくれた。昨日の試合で三振していたし、今日も使ってもらって何とかしたかった。同じ失敗をするわけにはいかないと思っていました。完璧です」

 前日28日には今季初の1軍昇格で即スタメン出場。同点の9回2死満塁は空振り三振に倒れ、11回に代打を送られた。まさに汚名返上。慣れた横浜スタジアムを沸かせ、踊るようにダイヤモンドを1周した。

 昇格直前には元3冠王の松中からヒントを得た。22日の2軍広島戦(由宇)で試合中にバッティング談議。すると代打本塁打をかっ飛ばした。「インパクトにいかに力を込められるかという話をした。スイングの音がブーン、じゃなくて、ブンとね。いろいろ聞いてきたから、僕もいろいろ聞いたよ」と松中。吉村は実績もある12年目の中堅だが、こんな聞く耳も、史上初の一撃を呼び込んだ。

 「今日の試合前にも監督からいろいろ聞けたので良かった。次はチームの勝ちにつながる仕事をしたい」。李大浩、松田と中軸の不振は気がかりだが、ハマのヘラクレスと呼ばれた長距離砲が、打線に明るい話題を提供した。【大池和幸】

 

 ▼吉村が古巣のDeNAから初本塁打。これで現12球団すべてから本塁打を記録した。全球団本塁打は13年6月5日相川(ヤクルト)に次いで28人目だが、吉村は横浜時代の09年に史上9人しかいない全打順本塁打も達成済み。全打順&全球団本塁打は、吉村がプロ野球で初めて。