<巨人4-0DeNA>◇12日◇東京ドーム

 巨人の「名コンビ」が強力DeNA打線を沈黙させた。先発内海哲也投手(32)をリードしたのは、今季初スタメンだった加藤健捕手(33)。直球を軸球に低めの変化球でゴロを打たせる、内海の王道スタイルで4安打完封勝利を飾った。人柄の良さで知られる「いいひと」バッテリーがチームを4連勝へ導き、最短20日の優勝へ向けマジックを14に減らした。

 わずか数秒も、待てなかった。ゴロが転がった瞬間、内海は左拳を握って、坂本の送球を見届けた。「よっしゃー!」。すぐさま、加藤に体を向け、握った拳を突き上げた。マウンドに駆け寄る加藤と笑顔で手を重ねた。「すごく合う。加藤さんがうまく引き出してくれた」。2人の絆でつかんだ完封勝利だった。

 1週間前と同じ状況でのマウンドだった。ともに登板直前の試合でマジックが点灯。「結構、プレッシャーがあった」。ふと考えれば、マジックが消えた前回登板が頭をよぎった。答えは1つだった。「自分はやれるんだ!」。弱気が入り込むスキを強気な言葉で遮った。

 相棒の存在が、心を落ち着かせた。1回表。内海は帽子のひさしの「柱」の文字を見つめ、集中力を高めた。クルッと体を反転させると、目に映ったのはドシッと構える加藤の姿だった。勝てなかった時、「今、何勝?」と冗談を飛ばしながら「テツ、大丈夫や」と励ましてくれた。2軍時代から何度も見てきた風景が、力みをスッと消した。

 加藤にとって、シーズンをかけた今季初の先発マスクだった。試合前、普段は温厚な男が、強い言葉で覚悟を示した。「今日の試合に懸ける。(自分の)全てをぶつける」。燃えたぎる闘志を前面に出しながら、描き上げたプランはシンプルだった。「哲のいいところを引き出す。それに徹する」。直球でカウントを稼ぎ、変化球で仕留める。球数は108球。内海の王道スタイルだった。

 お立ち台に上がった内海は言った。「引っ張りたくなかった」。9月に入って広島、阪神に3連勝。ライバルを引き離す直接対決に出番はなかった。「悔しくないって言うたら、ウソでしょ」。それでも、後ろ向きな姿は見せなかった。開幕前、「開幕投手という役目ではなく、違った形で引っ張る」と誓った。9日の阪神戦、ベンチの最前列で声を張り上げる姿があった。それが、答えだった。

 チームは4連勝で、マジックは14に減った。原監督は「ナイスピッチング」と内海を評価した後に「(加藤は)経験もあるし、人柄もいいし、チームで一番献身的な心を持つ」と続けた。試合後、加藤はしみじみと言った。「あいつ(内海)が良かっただけ」。名コンビに余分な言葉は、必要なかった。【久保賢吾】