<オリックス0-5ソフトバンク>◇16日◇京セラドーム大阪

 ゆったりとした投球フォームから直球は伸び、変化球が鋭く曲がった。国指定の難病を乗り越えたソフトバンク大隣憲司投手(29)は、4安打完封で無傷の3勝目。リーグ優勝をグッと引き寄せる白星に笑顔があふれた。

 「まさか完封できるとは思ってなかった。できすぎ。チームに流れを持ってきたかった。中継ぎの皆さんも休ませられて良かった。はじめからローテーションを守ってきた投手をずらしても、この試合に投げさせてもらえるありがたさを感じて投げた」。

 中8日で大事な初戦に起用した首脳陣に応えた。完封は12年7月15日ロッテ戦以来793日ぶり。昨年6月に黄色靱帯(じんたい)骨化症の手術後は初完投。オリックス戦は今季2戦2勝となった。

 1回2死二塁、2回2死満塁を乗り切ると流れに乗った。3回以降は二塁を踏ませない。今季未経験の8回以降も6人でピシャリ。9回は糸井を135キロ直球で空振り三振。この日最速は138キロながら、気持ちで相手を押し込んだ。

 7月の1軍復帰後、課題にしていたのが直球だった。前回7日の西武戦前にヒントを得ていた。「去年までの映像を見て気づいた。今シーズンは背中を反るような動きがなかった。投げ急いでいるわけじゃないけど、ゆったりした感じがなかった。だいぶ腕が横振りになっていた」。自己最多12勝を挙げた2年前のような輝きが、この日のマウンドには見てとれた。

 「球のキレがあったし、感じる部分はあった。じょじょにタイミング、間合いは(2年前に)近づいてきている」。完全復活へまた1歩。それを証明するような、魂の今季最多120球だった。【大池和幸】