<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク5-1阪神>◇第3戦◇28日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンク吉村裕基外野手(30)が足で藤浪から2点目を奪った。4回。先頭で四球を選び、今宮の犠打で二進。細川への7球目が暴投に。ボールがファウルゾーンを転がる間に二塁から一気に生還した。「跳ねた球が返って来なかったので、無駄なくホームに行けた。(体重が)100キロ近いんで藤浪君も怖かったでしょうね」としたり顔だ。

 笘篠三塁ベースコーチは暴投に気づかない細川に大声で振り逃げを指示するのを優先し、右手を回す余裕はなく「行け!」と声だけのゴーサインだった。すでにトップスピードに入っており、「止まる気はなかった」。甲子園より広い捕手の背後スペースとクッションボールの関係性は頭にあった。地の利もプラスに働いた。

 この走塁にテレビの前でうなずいたのが、吉村の母校東福岡の葛谷監督だ。「見事な走塁でした。私が教えた?

 いえいえ、ソフトバンクの走塁コーチの教えでしょう」。高2の冬、走力アップを目指した教え子の姿を覚えていた。「足は速くなかった。自ら陸上部の先生のところへ行って、走り方を習っていましたね」。故郷で戦う初めての日本シリーズで、小さな努力が生きたかもしれない。

 シリーズ初安打を放った6回は、2死満塁からの野選で3点目を踏み2得点。CSファイナルステージでは6打点でMVPを獲得。DH制で巡ってきた初先発は、バットではなく足で白星を呼び込んだ。【押谷謙爾】

 ▼4回に藤浪の暴投で二塁走者の吉村が生還。暴投で得点したのは12年日本ハム-巨人第3戦の日本ハムが6回(暴投高木京)と8回(暴投ゴンザレス)に記録して以来になるが、二塁走者が一気に生還は99年ダイエー-中日第2戦のダイエー以来、15年ぶり。99年は8回2死一、二塁の場面で、川上が打者小久保の3球目に暴投し、二塁走者の浜名が生還した。