阪神が海外FA権の行使を決断した鳥谷敬内野手(33)を“無期限”で全力慰留する。日本シリーズ敗退から一夜明けた10月31日、メジャー移籍が濃厚な鳥谷について南球団社長は「全力で慰留します」と話した。和田監督も「彼がいないチームは考えづらい」と語り、リーグ優勝から日本一を目指す来季への第1歩として、キャプテンの慰留に全力を尽くす。

 衝撃は大きかった。前日10月30日、日本シリーズ敗退と同時に、鳥谷のメジャー移籍を目指したFA宣言決断が明らかになった。ダブルショックから一夜明け、球団首脳の表情も厳しかった。福岡から大阪へ戻った南球団社長は「権利行使?

 そういうことでしょう。本人からそういう話があったと聞いている」と、鳥谷が海外FA権の行使を球団に申し入れていることを認めた。

 メジャー挑戦の夢を持っている鳥谷がFA宣言すれば、米大リーグからのオファーを待ってからの決断となることが濃厚だ。過去の日本人メジャーリーガーの例を見ても、12月にずれ込む可能性も高い。それでも、南球団社長は残留へ向け、全力で慰留を続ける方針を示した。宣言残留の可能性について問われると、こう言った。

 「それが理想。全力で慰留します」

 フロントだけではない。現場にとっても大打撃となる。帰阪する前、報道陣に対応した和田監督は「仮定の話はしたくないけど」と前置きした上で「今、鳥谷中心のチームづくりをしているから彼がいないチームは考えづらい。いろいろな話を聞いた上で残ってくれるのが一番いい」と神妙な表情で話した。

 鳥谷は早大時代から将来のメジャー移籍を夢見てきた。12年に海外FA権を取得した後もチームへの愛着から残留する一方で2年連続でFA宣言せずに単年契約で米移籍の可能性を残してきた。そしてメジャー全体で内野手不足となった今オフ、チャンスがめぐってきた。それだけに慰留する球団も悩ましい。

 「彼の場合は条件面の問題ではないだろう。昔からの夢だから」

 球団首脳が言うように条件面ならば、獲得に乗り出す可能性がある米大リーグ他球団を圧倒するものを提示している。ただ、鳥谷がFA宣言を決断した経緯を考えると条件面で上回っても、残留となる確証を持てないのが現状だ。

 球団はシーズン中から鳥谷と話し合いを行ってきたが、日本シリーズが終わり、再度、鳥谷と残留交渉を行う方針。この日、鳥谷は福岡の宿舎を出る前にFAについて問われると「ゆっくり考えたいと思います。現時点で?

 ご想像にお任せします」と話すにとどまった。球団は鳥谷の夢に理解を示しながらも、最後の最後まで慰留を続ける。