<仙台6大学野球:仙台大6-4東北学院大>◇プレーオフ最終日◇29日◇東北福祉大野球場

 仙台大が東北学院大を破って2勝を挙げ、80年秋以来67季ぶり3度目の優勝を飾った。右腕熊原健人(3年=柴田)が、中1日で先発して5安打完投。リーグ発足45年目で初のプレーオフに突入し、東北福祉大を含めた3校の歴史的な戦いを制した。熊原はベストナインと最優秀選手賞を獲得した。仙台大は初の全国舞台、全日本大学野球選手権(6月10日~、神宮ほか)に出場する。

 マウンド上で熊原が仙台大ナインにもみくちゃにされて、見えなくなった。史上初のプレーオフを連勝し、約34年間の沈黙を破る仙台6大学の頂点。「本当の出来事なのか」。MVP右腕は半信半疑だった。前回の優勝は、選手全員が生まれる前の80年秋。試合終了のあいさつを終え、ようやく実感が湧いた。「一番長い春でした。最高の春でした」。

 27日のプレーオフ初戦、東北福祉大戦を2失点完投。中1日の先発はリーグ戦でも経験しているが、完投はなかった。森本吉謙監督(40)は「今日に限ってはいける」と言った。その通り、尻上がりに熊原は調子を上げ、最速146キロを計測した速球に、冬場に覚えたフォークを効果的に使った。4点は失っても、優勝のかかった大一番で見せつけたエースの意地。リーグ戦4勝、プレーオフ2勝の計8試合65回1/3を投げ抜いた。

 昨春は3試合、昨秋は腰痛などで登板はなく、この春に彗星(すいせい)のように現れた。4月20日の東北工大戦でリーグ記録に並ぶ19奪三振。負ければ勝ち点を落とす5月11日の東北福祉大戦でも、完投勝利を収めた。「接戦を投げ勝って自信になった」と振り返る。森本監督は「変化球でカウントを取れるようになって、自信になったのでは」と分析。この日はフォークでカウントを稼ぐ場面があった。キャリアが少ないだけ伸びしろは十分。登板するたびに、新ヒーローは進化していた。

 仙台大は秋2度の優勝があるが、明治神宮大会の出場はない。熊原も小、中、高と全国舞台とは無縁で、大学野球の聖地・神宮のマウンドに立つ。「自分としてもチームとしても楽しみ」と話す。将来の目標はプロ入り。多くのスカウトが集まる全日本大学選手権で「仙台大・熊原」をアピールする。【久野朗】

 ◆熊原健人(くまばら・けんと)1993年(平5)10月19日、宮城県角田市生まれ。北郷小6年で野球を始め遊撃手。北角田中を経て柴田高から投手に。高校での最高成績は2年春の県4強。仙台大では2年春からベンチ入り。178センチ、76キロ。右投げ左打ち。最速152キロ。家族は両親と兄、姉。血液型O。

 ◆14年全日本大学野球選手権の東北勢

 富士大(北東北)、仙台大(仙台6大学)、東日本国際大(南東北)の3校が出場する。組み合わせは既に決まっており、富士大は10日の1回戦(神宮、午前9時)で九州6大学優勝校と対戦。東日本国際大も同日1回戦(東京ドーム、午後2時)で、静岡大(東海地区)と戦う。仙台大は2回戦から登場し、富士大と九州6大学優勝校の勝者と、11日(神宮、午前9時)に戦う。