侍ジャパンの佐々木朗希投手(21)が、日本代表史上最速となる162キロを3球たたきだした。

チーム初実戦の“開幕投手”として、「カーネクスト侍ジャパンシリーズ」の壮行試合ソフトバンク戦に先発。初球から161キロをマークするなど、球場表示では直球14球中10球で160キロ台をマークした。2回26球で1安打無失点。ダルビッシュ有投手(36)から伝授された新スライダーも駆使し、3三振全て空振りで奪った。世界一奪回への切り札となる侍エクスプレスが、万全の仕上がりを示した。

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侍ジャパンの初陣。第1球から、どよめかせた。佐々木が、自慢の宝刀を鋭く抜いた。「真っすぐの走りは良かった」。その言葉通りに、電光掲示板の数字が出た。球速161キロ。ソフトバンクの先頭・牧原大に当てられ、二塁内野安打を許したが、21歳の怪腕は動じない。3番柳田にはこの日最速、侍ジャパン史上最速の162キロで、豪快な空振り三振に斬った。「去年の(11月の)強化試合の時よりもいい形で投げられている」。冬を越え、WBC使用球にも慣れたことで、確かな手応えを得た。

日差しが強く、野球日和となった週末の宮崎。勇ましい若武者が華々しい先陣を切った。春が近づいているとはいえ、まだ肌寒さの残る2月下旬。オープン戦が始まったばかりのメジャーでは状態確認の時期だ。佐々木は、その段階で軽々と100マイル(約161キロ)を計測したことになる。「いいボールがいったと思いますし、この形を続けていけたら」と声も弾んだ。2イニング目も162キロの直球で5番栗原を空振り三振。「去年のシーズンとそんなに変わらないので」とサラリと振り返ったが、快速球の仕上がりは上々だ。

それだけではない。代表合宿でダルビッシュから教わった新スライダーも切れ味抜群だった。「まだ理想とは違いますけど、空振りも取れたので、変化自体は良かったのかなと」。2回2死、今宮から三振を奪ったスライダーは鋭角に曲がった。意識は「横に大きく曲がるような回転」。持ち球でもあったが、「全く別物を投げているような感覚」と、進化を実感する。首をかしげる場面もあり、完成形とはいかない。だが、データが少ない他国の打者にとって、新たな必殺球は強力な武器となりそうだ。

チームとして今季初の実戦。仲間にも助けられ、波に乗った。無死一塁から、女房役の甲斐が好送球で二盗を阻止。佐々木は「甲斐さんに助けられて立て直すことができました。このチームでの初戦、良い形で投げることができて良かった」。1次ラウンドは3戦目、3月11日のチェコ戦先発が予想される。残り2週間で「本番を意識した形でやりたい」。どっしりとした姿と冷静な言葉に、頼もしさが宿った。【斎藤庸裕】

 

★佐々木朗希投手が最速162キロをマーク。日本代表の投手では、09年WBC決勝・韓国戦(ドジャースタジアム)のダルビッシュ有、15年プレミア12・韓国戦(札幌ドーム)の大谷翔平が出した各161キロを上回る最速になる。ダルビッシュはマイル表示(100マイル=約161キロ)だった。佐々木朗は昨季のパ・リーグ公式戦で最速164キロをマークしている。

★佐々木朗の日本代表

◆高校 大船渡3年時の19年、奥川恭伸(星稜)宮城大弥(興南)らとU18W杯日本代表入り。8月26日、大学代表との壮行試合(神宮)では先発して1回無安打、2奪三振、無失点。球場表示で最速156キロ、スカウト計測で最速160キロだった。W杯では右手中指マメの影響もあり、9月6日韓国戦の1試合だけ。先発で1回無安打、奪三振1、無失点、最速153キロだった。

◆プロ 昨年11月10日、オーストラリアとの強化試合(札幌ドーム)で先発。WBC使用球で4回59球を投げ、被安打4、奪三振2、無失点。最速159キロ。59球のうちフォークを24球と多投した

 

▽栗山監督 ボールの状態がすごくいい。抜け球も少なかった。(言うことは)全くないです。

▽甲斐 すごいですね。本当に、すごいなと思いました。あれだけの真っすぐとフォーク。スライダーもいろいろ試して投げているし、どの球種も本当に良かった。横にきゅっと曲がるんで、今までのスライダーよりも確実にいいスライダーになっていると思いますし、手応えもつかんでると思う。より真っすぐが生きてくる。

○…え!? 佐々木が日本人最速169キロ? 佐々木の初回、ソフトバンク2番中村晃の初球直球は、中継するテレビ画面に「169キロ」と表示された。球場表示では159キロだった。宇田川の投球でも、球場表示150キロがテレビでは160キロと出る場面があった。中継局の誤表示だったが、169キロの表示にSNS上は「チャプマンと一緒やん」「恐らく誤計測だけど、この男ならあり得るかもしれないと思えるのが恐ろしい」とざわついた。

○…宮崎出身の戸郷翔征投手が、凱旋(がいせん)登板を無失点で終えた。4点リードの9回に6番手で登板。先頭への四球と安打で2死二、三塁のピンチを作ったものの、最後は谷川原を投ゴロに仕留め、今強化合宿初の対外試合を勝利で締めた。「地元宮崎での試合ということで、グラウンドに出た時の拍手と歓声が、とてもうれしかったです」と感謝した。

【WBC】佐々木朗希169キロ?侍ジャパンが勝利 ソフトバンク守乱/詳細