夢がかなった。開幕戦で侍ジャパンと対戦した中国代表チームを、1人の日本人女性が支えていた。小沢奈央さん(34)は、2月末から代表合宿を行っていた鹿児島・日置市のグラウンドで元気よく言った。「めちゃくちゃ楽しいです。夢、かなっちゃってます」。メインはトレーナー業だが、ストレングスコーチ、マネジャー、グラウンド整備など活発に動き回る姿は、ハツラツとしていた。

名古屋市出身で自身も野球をやっていた。憧れていた選手は「イチロー選手ですね」と即答。大学1年で選手生活を終え、夢だったトレーナーになるため卒業後に渡米した。米ネブラスカ州の大学、ミズーリ州の大学院を経て資格を取得。日本に帰国後、縁あって中国のMLBアカデミーでトレーナーをやらないかと誘われた。「全く迷いはなかったです」。28歳で単身、中国へ渡った。中国語は今でも「■好(ニーハオ)、謝謝(シェシェ)ぐらいですよ」と笑うが、「なんとかなります。気持ちですよ。あはは」と、明るく前向きな心が夢に近づけた。

18年から中国・江蘇省常州市で仕事を続けていたが、コロナ禍の影響で日本からリモートでトレーナー業務を行うこともあった。体のメンテナンスを自撮りの動画で説明することが多く「すごく、もどかしかった」。それでも我慢を続け、代表チームの一員として国際舞台に立った。

世界ランキング1位の日本と同30位の中国では、厳しい戦いが待っていた。「大金星狙って皆やってますよ」と意気込んでいたが、結果は完敗。ただ、侍ジャパンの先発だった大谷翔平投手(28)は言った。「相手の中国も素晴らしい野球をやっていて、本当に中盤、分からなかったゲームだった」。1次ラウンドは4戦全敗で敗退したが、選手とともに戦った小沢さんの足跡も、大会の歴史にしっかりと刻まれた。【斎藤庸裕】

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