陰のMVPダルビッシュも完勝Vに感激-。侍ジャパン最年長のダルビッシュ有投手(36)が、あらためて日本球界の底力に太鼓判を押した。

若い投手陣だけでなく野手陣にも慕われる「兄貴」として抜群の存在感と影響力を発揮。決勝戦では8回に6番手で登板して1失点で踏ん張り、守護神大谷との「世界一リレー」を完成させた。「侍大将」として若いジャパンを束ね、頂点へ導いた。

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かわいいだけでなく、たくましさも兼ね備えた後輩たちの笑顔が、何よりもうれしかった。8回に登板。シュワバーにソロは食らったがリードを守って大谷に託し、仲間と劇的な幕切れを迎えた。激闘を終えたダルビッシュは、メジャーの強者相手にひるむことなく立ち向かった同僚との日々と最高の結果で終わった瞬間を、満面の笑みで振り返った。「みんな友達みたいに仲良くなれましたし、本当に最高の時間でした」。

14年前の09年。第2回大会で胴上げ投手になった際は、22歳の若手だった。イチロー、松坂ら先輩メジャーリーガーの背中を追いかけ、無我夢中で歓喜の輪の中心に立っていた。36歳になった今、当時のことは正確に記憶していない。ただ、日本野球の質が、着実に進歩していることを実感した。「投手が投げている球も全然違いますし、野手の打球を見ても全然違う。当時とはまったくレベルが変わっていると思います」。

当時は、今でこそ浸透している科学的トレやサプリメント摂取など最先端の情報を取り入れるたびに、多くの反対意見も耳にした。それでも信念を曲げず、新たな分野に目を向けてきた。だからこそ、パドレスから「特例」の許可を得てまでも宮崎合宿の初日から参加。食事会も開き、自らの知識や経験を惜しげもなく後輩たちに伝えた。すべては今後の日本球界の発展を願う気持ちの表れだった。

「最高のメンバー」と思える仲間とは、ひとまず別の道を歩き始める。23年侍に対しては、「米国のベストメンバーに勝ったので、優勝できるんじゃないかな」と、MLBの公式戦でも勝てると思えるほど、確かな信頼感が芽生えた。

キャンプ直前には、パドレスと6年総額9000万ドル(約122億円)で契約を延長。大谷には、次回大会の代表入りも促された。「まったく考えてなかったですけど、その時、また選ばれるような選手でいたいとは思っています」。3年後は39歳。飽くなき向上心を持つダルビッシュが、再び「JAPAN」のユニホーム姿でマウンドに立ったとしても、おそらく誰も驚かない。【四竈衛】

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