王者比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)が1回KO撃破で、日本記録に並ぶ15連続KO勝利を飾った。元2階級制覇王者で挑戦者の同級9位モイセス・フエンテス(30=メキシコ)を左2発からの右ボディーストレートでダウンを奪取。1回2分32秒、KO勝ちで2度目の防衛に成功し、沖縄で日本人初の世界戦勝利を挙げた。同郷の元WBC世界スーパーライト級王者浜田剛史らの持つ日本記録に並び、新記録に王手をかけた。

 沖縄の血が、故郷で騒いだ。ゴング直後から凱旋(がいせん)試合の重圧を払いのけるように攻めた。強烈な右ストレートをヒットさせた比嘉は残り1分から左フック、左アッパー、最後は「きれいに入った」という右ボディーストレートをねじ込んだ。前のめりで倒れたフエンテスの口からマウスピースが落ちた。

 セコンドの具志堅会長が「もう終わったの? 参りましたよ、大吾くん」と驚いた、わずか152秒のKO劇。37年前、沖縄での14度目の防衛戦に敗れた師匠のリベンジを果たした比嘉は「倒すと言って臨んでいたので格好いいな、と思いました」と自画自賛した。観客からわき起こった指笛を耳にし「うれしくて涙が出そう」と感慨に浸った。

 具志堅会長らの昭和時代とは違う雰囲気が漂う現在の沖縄。「今の沖縄は何不自由なく、何もかもそろっているので、昔のハングリーさを失っているかも。自分の試合で何か見て感じるものがあれば」。試合3日前、脱水症状寸前で「足がしびれる」と訴えた。野木トレーナーの指示で、紙コップ2杯の水を30分かけて飲んだ。食事はパイン2切れのみ。前夜は一睡もできなかった。過酷な状況を乗り越えた圧勝劇で、ハングリーさも示した。

 これで同じ沖縄の浜田氏らと並ぶ15連続KO勝ちの日本記録をマークした。過去、世界戦を含めて達成した選手はいない。デビューからの全KO勝ちでの達成も比嘉が初めてだ。

 「浜田さんの記録に並べて光栄です。KOがなければ自分はただの世界王者。特別な王者になるために、KOを狙います」

 会場に集結した沖縄出身の世界王者5人に見守られた中、KO新記録に王手をかけた。無傷のため、V3戦は今春にも組まれそうだ。ボクシング王国・沖縄の系譜を継ぐKOキングが、グレートなサクセスストーリーを刻み続ける。【藤中栄二】