キックボクシング界の神童那須川天心(20)が圧巻のKO勝ちで19年初陣を飾った。立ち技世界一を争うトーナメントの58キロ級1回戦でフェデリコ・ローマ(33=アルゼンチン)を3回1分35秒でKO。昨年大みそかのボクシング元5階級王者フロイド・メイウェザーとの異種格闘技戦で1回KO負けしてから69日ぶりのリングで、パワーアップした姿をみせた。

「思い通りの試合ができました。ほっとしました」。注目が集まる復帰戦。マンガのような勝ち方で本来の力を示した。メイウェザーとの戦いを経て成長した1つが視野の広さ。久しぶりの試合で「戦っていて(相手が)見えた」と実感できた。1、2回とガードを固める相手の懐をこじ空けられなかったが、「3回で荒くなってきた」。左ストレートでダウンを奪い、「なにかやろう、と思って」とマンガ「グラップラー刃牙」の主人公の技「トリケラトプス拳」で挑発。そこから右手をついた左のハイキックにつなげ、鮮やかに試合を決めた。変形の左ハイキックには、この日「天心キック」と自ら命名した。

ほぼ同時刻、さいたまスーパーアリーナではK-1が行われ、キックボクシング界のもう1人の天才、武尊が勝利した。数年前からファンが熱望する2人の戦いは、まだ実現していない。

那須川は「団体の壁とかいろいろあるかもしれないですけど、いつか一緒になる日がくればいいなと思います。みんなで盛り上げている実感はある」と融合を期待。その先には「(東京ドーム大会も)あると思う」と大きな夢も描いた。

試合後には交流のあるJ2横浜FCのキングカズこと三浦知良に花束で祝福された。2月末に食事し、プロの流儀を教わったばかり。「よかったねと言われました。ああいう人からのよかったね、というのは重いですよね」。大みそかの屈辱を払う華やかな復帰戦で、神童から格闘技界のキングへと、また1歩近づいた。