ボクシングで高校生初のアマ7冠を達成した日本ライトフライ級6位の井上尚弥(19=大橋)が異例ずくめでゴールデンタイムに初進出する。プロ3戦目として来月16日、東京・後楽園ホールで日本同級1位の佐野友樹(31=松田)との10回戦を控える井上は27日、横浜市の大橋ジムで会見に臨んだ。既にフジテレビが午後7時から2時間枠のゴールデンタイムで生中継することが決定。テレビカメラ11台、大型ビジョン3台が配置されるという世界戦以上の演出が用意されることも決まった。

 試合中継局の意向で、大橋ジムには着用するスーツとヘアメーク担当が準備された。井上は父の真吾トレーナーとともに約30分間かけ、服装と髪形を整え、会見に登場。井上は「やりすぎかなと思いますが、テレビの方がやってくれということで。恥ずかしかったですね」と照れ顔。本人もビックリの「演出」は、ゴールデンタイムで生中継されるプロ3戦目でも次々と用意されていた。

 フジテレビは、通常のボクシング中継で5台というテレビカメラを11台配置することを決めた。その映像をお茶の間だけではなく、観客にも届けるために3台の大型ビジョンを会場に設置するという。同局の熊谷太助プロデューサーは「KOシーンなどを見逃す方がいないように考えました」と説明する。

 また試合終了後、そのビジョンに試合録画を映し、招待する予定の輪島功一氏、ガッツ石松氏、具志堅用高氏、飯田覚士氏、竹原慎二氏、畑山隆則氏、内藤大助氏、川島郭志氏、西岡利晃氏の元世界王者9人に内容を分析してもらうプランもあるという。

 井上はデビュー戦で4回KO、2戦目も1回KOで勝利しており、所属ジムの大橋秀行会長は「1回、2回で倒して勝ってほしいが、ゴールデンタイムなのに番組がもつのか心配な今日この頃です」と苦笑いを浮かべた。短時間で勝負が決まる可能性はあるが、熊谷プロデューサーは「1回KOでも全く大丈夫。準備は万端です」とさまざまな演出でカバーする予定。視聴率に関しても「数字は関係ない。井上選手の試合はゴールデンタイムで続けます」と断言した。

 プロ3戦目で初めて日本人選手と対戦する井上は「ゴールデンでやる限りは内容も求められる。4月は世界戦も多いし、比較されるはず。自分も世界王者並みのテクニックや試合運びをみせたい」。「怪物」の愛称にふさわしい数々の演出をバックに、ゴールデンタイムを盛り上げそうだ。【藤中栄二】

 ◆注目ボクサーのゴールデンタイム進出

 ノンタイトル戦では、06年5月に亀田大毅がプロ3戦目で兄興毅とともにゴールデンタイムの生中継で登場した。兄興毅が試合する前のセミファイナルに登場し、愛称の弁慶を装ったコスチュームで橋を渡って入場。その興毅はプロ10戦目となる06年3月のノンタイトル戦で初めてゴールデンタイムへ。井岡一翔は11年2月のプロ7戦目、辰吉丈一郎は91年9月のプロ8戦目、いずれも世界初挑戦時に初めてゴールデンタイムで中継。また国内開催の試合では、92年6月、米俳優ミッキー・ロークがダリル・ミラーと対戦したプロ3戦目もゴールデンタイムで生中継されていた。