昨年1月の初場所限りで現役を引退した、元関脇豪風の引退、年寄押尾川(40=尾車)襲名披露大相撲が1日、東京・両国国技館で行われた。

断髪式前には、12歳の長男海知(かいち)君と「最後の取組」で土俵に。何度も押しを受け止め、最後は自身が関取として3勝を挙げた、決まり手「一本背負い」で仕留められ土俵に正座して「参りました」と言わんばかりに頭を下げ、館内の大歓声を浴びた。

十両の取組後、出身地の秋田・北秋田市の津谷永光市長から市民栄誉賞を授与された。そして迎えた断髪式には、約270人の関係者が出席。横綱白鵬、元横綱稀勢の里の荒磯親方らがはさみを入れ、最後に師匠の尾車親方(元大関琴風)が止めばさみをいれて、約18年間のマゲに別れを告げた。

その後、国技館内で整髪し取材対応。「髪を洗っている時、入門してマゲを結う前のことを思い出しました。約18年、(頭に)あったもの(マゲ)がなくなるのは寂しい。頭にあったというより、身内みたいなもので『(頭に)いた』という、体の一部以上のものだったから」と、散髪してもらいながら、しみじみと話した。

最後に師匠から止めばさみを入れられた時は、さすがに「(こみ上げて)くるものがありました。人前では…と思っていたけど、耐えきれなかった」と大粒の涙を流した。最後の土俵上から見えた光景に「相撲をやっていなかったら、あの景色は見られなかったし、今の自分はない。相撲に感謝です」とも。地元秋田から、大勢の後援者が駆けつけてくれたことには「秋田から来てもらえなければ、豪風の断髪式にはならないと思っていた。秋田から、自分の想像をはるかに上回る、先輩や同級生や年齢の近い人とか、あれだけの人が来てくれて本当にありがたい」と喜んだ。

整髪後は、スーツにネクタイ姿で相撲案内所など各所をあいさつまわり。その間に行われた幕内の取組後、再び国技館の土俵下に足を運び、マゲを落としたスーツ姿で来場者にあいさつ。最後に、既に他界した両親の遺影を持ち「自分の息子に、綱渡りのような人生を歩んでもらいたくないと入門時も大反対した、お父さん、お母さんに引退した姿を見てもらいたかった。『お疲れさん』と言ってもらいたい一心で17年間、現役でやってきました」と、すすり泣くような声で話し、館内の涙を誘っていた。