体も頭もフル回転させて角界の頂点を目指します-。昇進を決めた昨年の春場所から1年。先の初場所で11勝を挙げ、かど番を脱出した在位5場所目の大相撲春場所(3月14日初日、東京・両国国技館)を迎える大関朝乃山(26=高砂)が9日、稽古後の報道陣の電話取材に応じ「頭脳派」への脱皮? を誓った。

部屋の稽古は、初場所後の休みを経て1日に再開。基礎運動や土俵に入っても、ぶつかり稽古にとどめていたが、この日から申し合いを開始。幕下以下の若い衆と15番ほど取った。「約2週間ぶりだったけど特に悪かったところもなく鈍ってもいない。ここから番数を増やしたいと思う」と今後を見据え「部屋には幕下(以下)しかいない。立ち合いとか、その後の流れとかも全然違うので、いろいろな関取衆と(稽古)できるチャンス」という、関取衆との合同稽古に備えるという。

そんな朝乃山が、自分への変化を求めたのが「苦手」と自認する頭を使うこと。立ち合いで思い切り頭からぶちかます-ではない。「15日間(本場所で)やる相手は全員、タイプが違う。その中で相手に対して、どうやって攻めるとかを変えていかないといけない。出稽古が出来ない分、頭を使わないといけない」と説明した。自分の武器である得意の形も「そう簡単に(相手が)右四つにさせてくれない。させてくれない時の対処法、右四つになるまでどう攻めるか工夫しないといけない。出稽古が出来ない状況で、やっぱり頭を使うべき」と何度も「頭」を繰り返した。

それは4連敗中の“天敵”ともいえる関脇照ノ富士(29=伊勢ケ浜)対策にも通じる。ちょうど1年前は、自分が大関を目指した時期で、その1年後の今は照ノ富士が大関復帰にリーチをかけた状況。この1年間で4連敗した相手には、相四つの「右四つがっぷりになれば相手の方が一回り大きいから胸を合わせると勝てない。下から下から攻めるとか、上手を取らせないとか」と、自分本位でなく相手の得意にさせない体勢作りを頭でイメージ。当たって土俵際まで押し込んだ昨年9月の秋場所を頭に思い描きながら話した。一方で自分が左上手を取れず上体が起き胸を合わされ、さらに相手に先に上手を取られ敗れたシーンも脳裏に残る。「そう簡単にはいかない。勝てないと言うことは何かが弱い、足りないということ」と話しつつ「自分の相撲を貫き通すしかない」と気丈さは失わなかった。

こう熱っぽく話す相撲いちずな朝乃山にも、ほっと心和ますひとときがある。ファンからの応援だ。昨年は段ボール2箱のチョコレートやプレゼントが届いたバレンタインデーが近づく。そこは本場所になぞらえ「(2月に入って)まだ9日目なんで。まだ時間があります」と、プレゼント攻勢もすっかり慣れたもの? 最近では受験を控えた女子校生から「朝乃山関の取組を見ると元気が出るので私も受験頑張ります」というファンレターが印象に残っているという。「自分の相撲を見ていただいて元気がもらえるなら、自分もより一層、頑張りたい。お客さんが頑張れるならうれしい」と、これからも土俵からメッセージを伝えるつもりだ。春場所の番付発表日(3月1日)が27歳の誕生日。「年でいうと中堅の部類に入る。大関として優勝したい気持ちが一番、強い」と“中堅頭脳派”を目刺し力強く締めくくった。