優勝争いの生き残りをかけた2敗同士の対戦は、錦富士の立ち合いも良かったけど、それ以上に高安が当たり勝ったのが最大の勝因です。

その後も右に左にと何とか回り込もうとする相手をよく見て、突っ張りも足も休まずよく出ました。終始、攻めきった高安に感心させられたのは最後の土俵際です。春場所の優勝決定戦で若隆景に逆転されたように、この日も左腕をたぐられ錦富士に、左にかわされました。土俵際の詰めの甘さが高安の泣きどころで、錦富士も狙っていたようですが、同じ過ちは繰り返さず腰を落として冷静に対応しました。

過去の反省から稽古場で直そうとしていたのでしょう。32歳になり普通の精神力なら欠点を直そうとしたり向上しようという気持ちは、なえてしまってもおかしくないのに、高安にはそれがない。そのあきらめない姿はファンも後輩力士もみんな分かっている。それがこの日の相撲に凝縮されていたと思います。これまで味わった悔しさと応援してくれる人の声が、今の高安を支えているはずです。優勝争いは14日目ぐらいまで見通せませんが、最後まで高安らしさを貫いてほしいです。(日刊スポーツ評論家)