今年も大相撲は話題に事欠かない1年となった。

新型コロナウイルス禍の影響で戦後最多の約170人が休場する名古屋場所を乗り越えるなど多くのドラマが生まれた。年6場所で幕内を務めた力士が対象の「第11回日刊スポーツ大相撲大賞」は独自の調べで発掘した好記録や珍記録を表彰する。第1回は九州場所で初優勝した平幕の阿炎(28=錣山)の「スピードスター賞」。

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1番当たりの取組時間が最も短かった阿炎が“スピードスター”に輝いた。平均5秒07。2位の阿武咲(5秒19)とは僅差だった。阿炎は「データからも自分の相撲をしっかり褒めてもらえて、うれしいです」と喜んだ。

初優勝した九州場所の本割を分析すると、白星を挙げた取組の総時間(12番)は32秒3。1勝あたりにかかった時間はわずか2秒69と平均を大きく上回る速攻劇。「いつも立ち合いでいかに先手を取るかに集中していました」と持ち味の思い切りの良さが光った。対照的に取組時間の長い力士の上位には逸ノ城、小結霧馬山、横綱照ノ富士が名を連ねた。この点について聞くと「四つ相撲の人たちと対戦する時は相撲が長くなるほど不利になるので、とにかく速く取ることを意識しています」と明かした。

冬巡業でもファンから優勝を祝う言葉を受け、年納めの場所を制した喜びを分かち合った。勝負の来年に大関とりを期待する声も高まる中で「結果がついてくれば上を目指せる。自分の相撲をしっかり取り続けたい」と誓った。【平山連】