全国各地の匠(たくみ)たちが、相撲界を支えている。日常生活で見慣れない数々のアイテムは、土俵に上がる力士たちにとって必要不可欠なものばかりだ。春場所(10日初日、エディオンアリーナ大阪)を前に、職人たちの思いを伝える。4回目は十両以上の力士が荷物入れとして使う明け荷。
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労を惜しまぬ丹念な手作業が、大相撲に欠かせない良質な竹細工を生み出している。京都市内で京つづらを作る渡辺商店は、関取や行司が荷物入れとして使う明け荷作りを一手に引き受ける。担当するのは3代目の渡辺良和さん(59)と長男の駿さん(33)の2人。作業場に足を運ぶと1つ1つの工程を妥協しない姿があった。
規格は縦45センチ、横80センチ、深さ30センチ、重さは空の状態でさえ10キロで、これらに加えて横綱専用のものは化粧まわしが三つぞろいになるため深くなる。側面に朱色で関取の名前が書かれて仕上げとなる。完成までにかかる期間は約1カ月。とりわけ気を使う作業は「長さも厚さも同じように竹を切っていくことだ」と力説。粗雑に仕立てると、仕上がりにも大きく影響を与えてしまうと注意を払う。
相撲好きだった先代の父が仕事を請け負い、そこから30年以上明け荷作りを担当してきた。場所後の昇進を見越して「大体5個ほど」ストックしているので納期に遅れたことはないが、若花田(のちの若乃花)と貴花田(のちの貴乃花)が活躍した「若貴時代」は対応に追われた。「横綱昇進後、後援者から注文が殺到して3カ月で48個作ったこともある。2人だけで引退するまでに各100個は作ったかな。周囲が昇進するたび、しこ名が変わるたび新調してくれました」と懐かしむ。
春場所前には新大関琴ノ若の後援者からは既に大関「琴桜」仕様の明け荷の注文を受けた。既に完成し、納品を済ませたという。渡辺さんは「優勝直後に支度部屋に引き揚げた時、テレビに映った明け荷を見ると誇らしくなる」と目を細めた。【平山連】(おわり)
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