7月開催の「レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」は今年で25回を数える。

 昨年の米映画「キャロル」、1月に公開された日本の「彼らが本気で編むときは。」、そしてアカデミー作品賞に輝いた「ムーンライト」とLGBT(性的少数者)を題材にしたメジャー作品は年々増えているように思う。

 それでも、LGBTの人口比率からすれば圧倒的に少ない。「レインボー-映画祭」では、今年も一般公開の機会がない13本が上映される。

 中にはベネチア映画祭金獅子賞のベネズエラ=メキシコ映画「彼方から」などの注目作もあり、日本の「西北西」(中村拓朗監督)には、NHKの情報番組などでハッとするほど美しいイラン出身のサヘル・ローズも出演している。ドキュメンタリーからサスペンスまで逸品ぞろいである。

 LGBTのことを書くたびに多くの賛否の声をいただくのだが、四半世紀になんなんとする「レインボー-映画祭」のように書き続けていかなければいけない題材だと思っている。

 タレント一ノ瀬文香とダンサー杉森茜の「同性婚」、そして2年目の破局を取材したこともあって、先日、LGBTの人たちの話を聞く機会があった。

 杉森が主催したイベントに参加したダンサーの米俵梨華は今夏、「インターナショナル・クイーン」で世界一を目指すニューハーフ美女だが、「妻帯者」でもある。お相手はいわば米俵とひっくり返った形になるトランスジェンダーの女性で、戸籍上は妻、実際は「夫」として同居している。

 米俵は「婚姻届を出すときに役所の人がちょっと混乱していましたが、どっちがどっちにしても男性と女性ですから。問題なく入籍できました」と振り返る。2年前、婚姻届が不受理となった一ノ瀬と杉森のケースとは違い、こちらは公的な夫婦となったわけだ。

 一見、楽天的な米俵だが、「家族から『子どもの頃から変わらないね』と普通に言ってもらっているから」と、改めて周囲の理解に感謝している。

 同じイベントでカミングアウトしたゲイのダンサーYuiは、高校1年のときに1人の男性に強い思いを抱き、自覚したという。「もう、一途に追い掛けましたから。へこたれない性格だからこれまでやってこられた」と話す。

 杉森によると、少しずつだが理解は広がっているという。「法律関係の事務所を経営している人なんですけど、ゲイであることをカミングアウトして、昼間はそこでばりばり働き、夜は私たちのイベントで思いっきり踊っている。そんな楽しい毎日を送っている人も確かにいます」。周囲の理解で、文字通り人生を謳歌(おうか)している例もあるのだ。

 一方で、イベントには参加するが、職場や家族には内密にしている人も少なくない。「私も親に言うときは勇気がいったし、『職場でやりにくくなるし、お客さんの中には気にする人がいるから』という人たちの気持ちはよく分かります」と杉森は言う。医療や接客業…患者(お客)との距離が近い職業ほどカミングアウトが難しい一面もあるようだ。

 電通ダイバーシティ・ラボの「LGBT調査2015」によると、LGBTを自認する人は全体の7・6%にあたり、左利き、AB型の人が日本人に占める割合とほぼ同じだという。

 当たり前の存在としての理解は、当たり前のことだと思っている。【相原斎】