「ゴーン・ガール」(14年)の好演で、一躍注目されたロザムンド・パイク(42)は、ゆがんだ心を魅力的に見せてしまうところがある。

浮気夫をワナにかける「ゴーン-」で、ヒロインが執着したのは突き詰めれば夫への愛だったが、新作「パーフェクト・ケア」ではひたすら金にこだわる。

マーラ(パイク)は「法定後見人」。判断力の衰えた高齢者の財産を守り、ケアする仕事だ。が、実際は認知症の専門医とグルになり、裁判所を手玉に取って、高齢者をケア施設に送り込んでは、その財産を売り払って「高収益」を上げている。公私をともにするパートナーのフラン(エイザ・ゴンザレス)と経営する会社は多くの「顧客」を抱えて繁盛している。

ある日、旧知の医師から資産家で身寄りのないジェニファー(ダイアン・ウィースト)を紹介される。かっこうのカモと彼女を施設に送り込み、財産整理を始めるマーラだが、実はジェニファーはロシアン・マフィアの大物ローマン(ピーター・ディンクレイジ)と深い関わりがあって…。

「私たちは高齢者を守っているの」とマーラは一貫して悪びれない。遠回しに始まるロシアン・マフィアの脅しにも1ミリもぶれない。命の危険をにおわせる強圧にも、かわすのではなく、正面からぶつかる。自分の母親の住所を知られても、「あんな鬼母、勝手にして」。険しかった生い立ちも想像させる。

ためらいなく裸で登場したロンドン・ウエストエンドの舞台「ブルー・ルーム」(03年)の話題を覚えているからかもしれないが、パイクの肝の据わったところがマーラに重なる。

そのやり口に陰湿的な部分があるのは否めないが、マーラには憎みきれない不思議な魅力が漂っている。

凶悪なマフィアを相手に、知恵と工夫、そして法を盾にした戦いっぷりは痛快で、物語は意外な方向に展開する。

思わずうなるラスト。ヒントになってしまうかもしれないが、28年前のドラマ「振り返れば奴がいる」(三谷幸喜脚本)の印象的な幕切れを思い出した。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)