劇中にも「SISUはSISUなんだ。訳しようがない」というセリフがある。あえて訳せば不屈の魂、折れない心となるフィンランド特有の言葉だという。

1917年に帝政ロシアから独立したフィンランドは、39年からはソ連との「冬戦争」、44年の休戦協定後は自国からのナチス・ドイツ軍の追放を求められ、結果ドイツ軍の焦土作戦によって国土の多くを焼かれた。SISUはそんな苦境に立ち向かうために生まれた言葉のようだ。

「SISU/シス 不死身の男」(27日公開)は、その焦土作戦の末期、SISUと呼ばれる老兵がたった1人でドイツ軍の戦車隊を殲滅(せんめつ)してしまう痛快アクションだ。

北部ラップランドの荒野。愛犬とともに隠居生活を送る元兵士のアアタミが金塊を掘り当てる。換金のために街へ向かう途中で彼はドイツの戦車隊と遭遇する。敗戦濃厚でモラルの低下した部隊は、焦土で捕らえた女性たちをトラックに乗せ、アアタミの所持品検査で金塊を見つけるや奪おうとする。

が、その瞬間にアアタミのナイフが一閃(いっせん)。瞬く間に数人の兵士が倒され、老兵は姿を消してしまう。完全武装の戦車隊と、ナイフとツルハシだけが武器の老兵との死闘が始まる。

司令部との交信で、戦車隊の将校はアアタミが実はたった1人でロシア兵300人を殺した冬戦争伝説の兵士SISUだったことを知る。

地雷原に追い込まれても、水中に逃れて機銃掃射を浴びてもSISUは死なない。奪い取った武器による反撃でドイツ兵は1人また1人と倒れていき…。

サミュエル・L・ジャクソンが主演した「ビッグゲーム 大統領と少年ハンター」の風変わりなアクションの見せ方で、独特の才能を見せたヤルマリ・ヘランダー監督は、神懸かった活躍をするSISUをギリギリ生身の人間として描いている。だから闘いの度に増えていく傷や自ら施す治療の描写は生々しい。痛みがヒリヒリと伝わってくる。

主演はヘランダー作品の常連ヨルマ・トンミラ。みるからにタフな面構えに加え、体を張った怪演で、筋肉が唸るような持久力や信じられないような俊敏さに説得力がある。

ヘランダー監督は「幼い頃に観た『ランボー』のような映画をフィンランドで作りたかった」と明かしているが、祖国防衛という設定もあって「ランボー」よりぐっと地に足がついた感じになっている。

あまりにも折れない心に付き合ううちに、日本語表記では同じとなる「スター・ウォーズ」のダークサイド、シス(Sith)の強大な力が重なって見えてきた。【相原斎】