高額賞金を目指して命懸けの闘いを繰り広げるデスゲームものは、1ジャンルと言っていいくらい多くの作品が製作されてきた。近年では「イカゲーム」や「カイジ」などのヒット作がある。
87年公開の「バトルランナー」は、その先駆けのような作品だった。刑事ドラマ「スタスキー&ハッチ」のスタスキー役で人気のあったポール・マイケル・グレイザーがメガホンを取り、アーノルド・シュワルツェネッガーが主演。近未来の格差社会を舞台に、テレビのデス・ゲーム番組への参加を余儀なくされた元警官の決死の闘いを描いた。
「ランニング・マン」(30日公開)はスティーヴン・キングの同じ小説が原作だが、ゲームの舞台は「バトルー」の限定空間から街中にスケールアップされている。逃げるランナーと追うハンターのバトルは市井の人々を巻き込み、逃走領域が広い分、報償金目当ての通報も絡み、「逃亡者」的ヒリヒリ感が加わる。「イカゲーム」や「カイジ」になかったテイストだ。
時代を映し、「バトルー」のテレビ局は巨大ネットワーク企業に置き換えられている。デスゲーム「ランニング・マン」はグローバル企業が主催する世界最大のリアリティーショーという設定だ。
挑戦者の逃走範囲は無制限だが、高度な殺人スキルを持ったハンター軍団は明らかに「ゲーム」のイメージを逸脱している。懸賞金も掛けられるので、武器を取って彼らを追いかける市民も加わる。
難病の娘の治療費のために巨額の賞金を目指す失業者のベンは、参加間もなくハンターたちの想像以上の追跡殺傷スキルを思い知らされる。ゲームの行方は視聴者数第一のプロデューサーの思惑しだいだ。そんな中、ベンは支配層に反旗をひるがえす地下組織に助けられて…。
「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督は、キラキラにショーアップされた配信スタジオとすさんだ街角、そして重武装のハンター軍団と着の身着のままのランナーに格差社会のコントラストを映しだす。
主役ベンはグレン・パウエル。出演に際して、「トップガン マーヴェリック」で共演したトム・クルーズから「すぐに自分が走る姿を録画チェックした方がいい。自分が思うほどカッコ良くないから」とアドバイスを受けたそうだ。そのかいあってか、爆破シーンの中を駆け抜ける姿は確かにカッコいい。
スティーヴン・キングの眼力というべきか。「バトルー」の頃には遠い話に思えた格差社会のデストピアが、今回はより現実味を帯びて感じられた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




